今宵夢見月の下で。

 
近所の進学校の教諭が児童猥褻やらポルノなんたらで逮捕送検されたらしい、というのは風の噂、というか赤司がネットのニュースで拾ってきた翌日。

「**俊君、ですね。」

めんどくさ。
伊月の第一印象というか、警察手帳を見せられて最初に過った言葉は間違いなくそれだった。苗字の部分はノイズが混じったように聞き取れなかったのは一種の防衛本能だ。

「伊月俊は俺ですが。」
「イヅキ、というのは遊び名前か?」
「いえ、本名です。昔の。」

春の嵐が風塵巻き上げている今日は、ストバス日和というにはちょっと、いやかなり無理がある。埃っぽいが広い公園には若者から年寄りから色々あるが、二人の警官は伊月に任意同行を求めた。

「この男に見覚えは?」
「愛煙家には厳しい社会ですよね。」
「質問に答えなさい。」

生活安全課、とプレートの掛かった部屋の来客用スペースに伊月は通された。煙草くさい室内は禁煙の張り紙がされていて、まあこっちも叩かれれば埃は満載なわけだし、と伊月はその写真から記憶を辿る。

「俺のこと、どこまで調べました?」

どうやってアシが付いたのか、まあそれだけは気になるな、なんて。

経緯としては、先日逮捕された男のパソコンを探っていると明らかに未成年であろう少年たちに画像がパスワード付きのフォルダに隠されており、その中に伊月によく似た少年との、所謂ハメ撮り写真が出て来た訳だ。甘っちょろいなぁ、なんて嘆息は警察には眉を顰められた。

「画像、見れますかね。」
「どうして犯行が、とは?」
「あー、一応俺も年齢的にはR指定無いんで。連れて来られたならそれなりのチクりとかいんでしょ?俺の知人ですか?」
「こちらの言うことを聞いてはくれないか・・・。」
「紅はくれない、キタコレ。」

随分と手を焼きそうだ、と二人の警官は項垂れた。生活安全課、ということは拳銃などの所持はしない。かといって伊月にとってここは逃げる場面でもない。
取り調べの際の写真を見せられても、うん、と首を捻っただけで思いあたりは、ないことも、ないようなないようなないような。詰まりは無い。

「質問、いっすか。」
「煙草なら即刻送検させるが?」
「違いますって。隠しフォルダの暗証番号。」
「役に立つか?」

民間には公にされないが警察協力者という名のチクりがいる。生活安全課にとっては有り難い存在でもあるだろう。

「1023?」
「・・・なぜ。」
「え、正解っすか。うっわきっしょ。写真を確認させて下さい。」
「何の数字だ。」
「俺の近辺調べたなら判るでしょ。被害少年の素姓は?」

それが、なんて眉をしかめた警官に、噴き出しそうになるのを彼は深呼吸二つで整えた。

「知恵、貸しますよ?」

そのまま電話を借りて、最初にコールした相手は福井。ネットに関しての知識は与えられるままの人種だが、インターネットという仮想の繋がりよりも現実のそれに勝るものはない。期待通りの返答に頷き、今度は宮地。法律関係の質問を幾つか投げかけて投げ返されて、とその間大凡30分。案外時間取っちゃったな、と頭を掻いた。

「これが画像だ。一部は加工してある。」
「いいんすか、それ。」
「未成年相手だからな。」

際どい箇所は黒く塗り潰されて、しかし顔はしっかりと確認できる。中学生被害者の中にはかの有名私立中学の制服を纏って籍を持つものもいた。
流石に被害者の名前は教えてくれないだろうと伊月の検討は正しく、じいっと穴が空きそうに見つめた写真には、綺麗な黒髪の少年から青年に変わるであろう年齢の彼が泣きながらこちらを向いている。
ペニスにはバンドを巻き付けられて、後孔からローションを零しながら咥え込んだ玩具を見せつけるように尻たぶを左右に拡げている。

「んー、残念ですけど。」

見覚えないすわ、とどろどろに汚されている淫乱な貌をぴんと指先で跳ねた。

「何かあったら、またどーぞ頼んでやってくださいよ。」

お疲れ様です、と綺麗に頭を下げた姿勢に、逆に警察のほうが申し訳なさそうで、背筋が伸びた気配がした。

***

「ねえ、その写真、オカズにするの?」
「他にもあるんだよ?」

事後の気怠い身体を引き摺ろうとすると、男のほうからスマートフォンの画面を見せてくれた。
勃起不全だった男は散々彼の体を弄ぶと身綺麗にしてくれたのは有難かったが、縛られた手足やぎりぎりと性器を縛ったベルトにまだあちこちが痛い。強制的に何度もイかされて、頭が狂うかと思った。まあ、その辺は既にぶっ壊れているのだろうなぁ、と彼は考え、写真を捲って行く。
学ランのスラックスを脱がされた物陰の少年や、鮮やかな水色のブラウスの少年は隠し撮りから始まって泣きじゃくる顔や清潔感のある白いブレザーに精液のような粘つく何かを引っ掛けられている。

「ね、これ何枚か俺も欲しいな。」
「自分をオカズに抜くのかい?」
「ご想像にオマカセ。」

あざとく片目の睫毛をぱちんと弾いてやれば、いいよ、なんて男は簡単に落っこちた。

「だったら、ねぇ?」
「縛られるの、クセんなったらやだからぁ・・・。」
「うん?」
「俺が、えと、自分でシて、るのでも、いかな?」

言葉を選んだ素振りで誘ってやれば、酷く趣味の悪い、黒いディルドを渡された。
自業自得の悪夢をこれから見せてあげるから。


***

「膝の傷、写ってなくってよかったー!」
「まったくだよね。」

今日も夢現の彼らは生きている。

***

なんかもー文章浮かばない。4LDK続き早く。そして今月探偵えろ描きたい。

2013年3月14日 01:06初出。

これはひどい。


20130404masai