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唄を忘れた金糸雀は
後ろの山に棄てましょか いえいえそれはなりませぬ 唄を忘れた金糸雀は 背戸の小藪に埋けましょか いえいえそれはなりませぬ 唄を忘れた金糸雀は 柳の鞭でぶちましょか いえいえそれはかわいそう 今吉探偵と伊月助手と忘れていた唄。 気が急ぐ。 私立今吉探偵事務所の二階はしっかりとした書棚が幾つも並んでいて、幾つかの実験道具の揃えられた作業台があって、簡素ではあるがどこか高貴なベッドがある。 昨夜は酷い雨だと思ったら季節の変わりの風塵が吹き荒れる窓のこちら、仄暗くなった二階の電球を伊月は灯さず、資料の読了に没頭した。その衝動は紛れもなく、追い立てられるような漠然とした、いっそ無様な程の焦りの感情だった。 変口長調に紡がれる八十のうつくしい言葉は胸に響いてもくれなかった。 「月ちゃん。」 パチン、と目が眩む感覚に、伊月は目元を擦って振り返った。 「あ、翔一さん、お客様でも?」 「もう疾うに看板下ろしてしもたよ。」 「・・・何時っすか、今。」 うわ、と思わず言葉を無くし、伊月は顔を覆った。時間の経過に気付けない程に集中していたのなら僥倖ではあるが、同時に一辺倒な自分に反省を思えずにはいられない。 「最近、よぉ読んどるな。」 「知識、あっても荷物にならないんで。」 「頭が硬なるんはお荷物やで。」 伊月の持つ柔軟な思考が今吉には新しい。言葉とは裏腹、宥めるように美しい黒髪を梳いてやれば、白い頬がそっと擦り寄ってくる。 「この本は読むな。こっちは純粋に知識で持っとき。これは、ああ、ここにしか無いんやな。発禁食ろうとる。読んでもええけど娯楽にしとき。もっとオモロイのん、今度まこっちゃんに手配してもらおか。」 「はい。」 読むな、と言うからにはそれ相応の理由があるはずだ。それ相応の思惑が今吉にはあるはずだ。伊月はそれを理解しているから追いかけない。未だ、それでいい。自分にしか出来ないなら、それがいい。 作業台に積み上げてあった本を伊月は持ち、確りと作られている書架にすとんと収めて行く。万が一収納場所を間違えれば花宮に烈火の如く怒られるが、生憎記憶力は悪くないほうだと自負はある。 「・・・月ちゃん。」 「はい?」 「紅茶?」 「いえ、そろそろ失礼しますんで。花宮は?」 「こっちの残業終わったら本業やな。なんや書類用意しょった。」 「そうですか。」 今吉は作業台から離れて、からり、下駄を鳴らすと伊月の背から痩躯を抱き込んだ。 「なんですかー。」 ことん、と最後の一冊を仕舞い終わって、背中の体温に伊月はくすくすと笑った。 「せやって、最近月ちゃんあんまワシに構ってくれんもん。」 「いい年こいて、もんとか可愛くないですよ。」 ちゅ、とその頤にリップ音を聞かせてやれば、もっと、なんて学生服の上から腹を撫でられる。 「ん。」 首を伸び上がらせて、顎に、耳の下、首筋にやわらかくくちづければ、こめかみにくちびるを押し当てられ、耳に掛かる髪を食まれた。額、眉間、瞼に押し当てられる温かい優しい感触に伊月は身を捩る。 「くすぐったいです。」 指先でついっと悪戯に喉仏をくすぐってやれば、鼻先を舐められた。 「犬猫ですか。」 囲われた腕の中で踵を返し、肩口に甘えるように顎を乗せれば、耳元に呼吸の音と皮膚を弾く鼓動の感触に安心する。忘れそうになっていた、と伊月は目元が熱くなったのを隠すようにその胸元に貌を隠した。 「翔一さん、好き。」 「うん。焦らんでええよ。」 「焦ってました。」 とくとくと、心臓の音に耳を澄まし、子供のように擦り寄った頭を今吉は優しく撫ぜて、鍛えられた痩躯を抱き締める。 「・・・そろそろ放して貰っていいですか?」 「なんで?」 「・・・聞きますか。」 全く、と呆れたように嘆息した伊月に、今吉はそのまま身体を密着させるように抱き込んで動かない。 「処理に使われるのは御免ですよ。青二才じゃあるまいし。」 「欲求不満に年齢関係無いやろ。」 「少なくとも自制は関係あると思います。」 「月ちゃんにくっついたら、こー。」 「自制しなさい!いい大人が!」 「都合ええように大人扱いせんとって。」 なあ、と耀く黒髪の狭間に覗く赤い耳に熱っぽい吐息が落ちればぴくりと肩が跳ねる。 「脱がして、ええ?」 せめて電気を消せ、脱ぐから脱がすな、と一通りの訴えは見事に聞き流されて、汚したら花宮に殺される、なんて考えたら読まれたように肩口を齧られた。 「あ、や。なんっ。」 「ワシのことだけ考えて?」 「・・・っん。」 握り込まれた性器は同時に絶妙な具合で扱かれ、ぷくりと先走りで今吉の手を汚している。スラックスも下着も膝上で撓んで、崩れそうになる膝は書架に手をついて、声を殺すのにその甲に噛み付こうとして、骨ばった指に止められた。 「舐めて。」 ん、と期待で喉が鳴る。今吉の皮膚の味を堪能するように舌を絡ませ、唾液を絡ませると、ええこ、と微かに今吉は笑い、くるりと亀頭を弄った。 「んあ、翔一、さ、でそ・・・。」 「ほら、処理せんから。早いで。」 「そんなっ、じか、なかっ、た!」 くらくらと熱に揺れた頭で快楽を追って腰が揺れる。唾液に濡れた骨ばった指が太腿の内側をそろそろと撫で上げれば、きゅっと背が撓った。 「力抜き。」 「ぅあっ。」 ずるりと肉を捲られる感触に悲鳴のような声が出た。 「・・・狭い、な。」 「まって、翔一さん、待ってっ。」 深い呼吸を繰り返し、縋った棚に甘ったるい息が零れた。 「ん、いけ、そ、ですか?」 「上手いなったなぁ。上、脱いでまい。汚したら面倒臭いやろ。」 「・・・んっ。」 ぬく、と関節を飲み込んだそれに、春先の気温で膚がしっとりと火照り、脱ぎ落とされた学生服は書架に預けられた。シャツの下に潜り込んだ手のひらが背骨を数えるように登ってきて、悪寒に似た熱に耳の裏舐められ、喉が引き攣った。 「あ、はっ。」 「ん、ええこ。」 「っ、んんー!」 中でくるりと返された指の腹に、吐き出されたそれが今吉の手に受け止められ、運ばれるのを伊月は快楽の熱に潤んだ目でぼんやりと追いかける。赤い舌が舐め取って、口の端が意地悪く吊り上った。 「や、舐め、やぁだ・・・。」 「濃い。」 「うっさい!翔一さんの、ばっ、かぁ・・・!」 振り上げようとした腕は縋るのが精一杯で、精液が塗り込められると、るちぬちと出入りが楽になったそこに指が増える。 「だめ、また、いや、そこ、も、さわんな、い、っ、ー!」 くたくらとはしたなく腰が揺られて吐精されたそれはまた後ろに増える。 「・・・は、ぁ・・・んっ。」 しゅるりと衣擦れの音に、衣服を乱され散々性器を弄ばれてあらぬ場所を犯されている格好に気付く。ああ、と声にせずに伊月は泣いた。 「月ちゃん、平気?」 「あ、の、・・・ですね。」 くったりと棚に預けられていた手を今吉は取り、柔軟な指先を愛おしむようにくちびるを当て、荒くなってきた吐息は熱に濡れている。 「た、・・・たった、まま、とか。」 「うん?した事あらへんね?力抜いて。指に増やすから。」 「んあ、しょい、ちさ、も、・・・むりっ。」 「なんで?怖い?」 「こ、怖い、です。」 「したことないから?」 「だ、だって、きつっ、あ、いま、でも、んん、あっ。」 「そんなんやったらなぁんも出来んなるよ?」 「ぅ、はぁ、ん、んっ。」 「・・・うん。」 顎を捕まえて深くに接吻けてやれば、くちりと内壁が蠢いた。薄らと持ち上がった扇型の睫毛がきらきらと涙に飾られた。 「ふあ、あ、ひろっ、拡げ、な、っ、しょういちさんっ!」 「俊?」 「も、だいじょ、ぶ、なんで・・・いれて、も。」 「こっちおいで。」 かわええ、と熱っぽく囁かれて肩が震えた。熱い切っ先が後孔を探る際にぬるりと滑ったのに、あ、と熱い声音が落ちた。背後から抱き締められて、くにくにと胸元を弄られれば勃起し、爪で抉られて崩れそうになって掠れた単に指先が縋れば、ぐ、っと身体を拓く熱が埋め込まれた。 「う、っく。」 「月ちゃん?」 「・・・しょーいち、さ、いつも、より、おっき・・・?」 「まあ、月ちゃんもいつもより狭いね。」 体位やら間隔なんて考えるだけ野暮だ。震えそうになる奥歯の合わせをぎゅっと噛み締め、張り出したそれが内壁を抉ると同時に喉が反った。 「ちゃんと呼吸しぃ。」 「あっは・・・、あぁっ!」 僅かに力の抜けた肉鞘に肉刀を納め、びくびくと痙攣を繰り返す太腿を撫ぜた。 「あ、しょ、いち、さ。さわんな、でっ。」 「んー?」 「や、やだ、あ、ぁあ、ぬ、ぬいってぇえ!」 「あーかーんー。」 「ひゃうっ。あもっ、おかしくな、る・・・ぁやああん!!」 蹴り上がった膝の衝撃に中が動いて、縋った着物に顔を埋めた伊月はそのまま絶頂を越した。 「・・・っは、もや、むり。む、りぃっ!また、きちゃ、やら、しょいちさあ!」 「ちょっと、・・・ええこにしとって。」 暴れる熱に耐えられない若い身体から下衣を靴を脱ぎ落とさせて、身体を折らせると抱え上げた。 「・・・っ!?」 突然の衝撃に声も出せずに、美しい黒髪はぼろぼろと涙に濡れた。奥深くを抉られるそれにはくとくちびるを震わせた。 「おいで。」 「あ、んっ。」 強引に肩を掴まれくちびるをくちびるで塞がれ、舌を絡ませ唾液を啜る。くっとりと喉に優しく絡む甘さが好きだ。今吉は背を書架に預け、抱え上げた脚をゆっくりと解した。 「・・・なん、て、こと・・・っ!」 上がり切った呼吸で、一度抜けばよかったのに、なんて訴えられて、それのそうやった、なんて笑えば力の入っていない拳に額を弾かれた。向き合う形がやっぱり最高に堪らない。 「あっ。」 じわりと犯された熱に小さく伊月は肩が振れた。悩ましげに寄せられた眉にくちびるを押し当てると、直後に強引なくちづけに見舞われる。酸素が圧倒的に足りない。立ったまま足のつかない場所で穿たれ、必死に縋りつけば脳の奥がばちりと弾けた。 「翔一さんっ!」 「俊。おいで。」 全く持って思い通りに動かない身体はがくがくと揺られるだけで、ぎゅ、と縋り付いた爪で今吉の胸元に赤い痕を残した。 「あぅ・・・あ、は。しょ、いち、さー・・・!あっ、あ、や。やんっ!んんっ、ん!くぅ。あっ。」 腰を掴まれての激しい律動に言葉は嬌声になるだけで、くちびるを噛むと親指の腹で強く口内を犯された。 「声、聴かせて。」 「や、れすっ!はず、かぁしっ!もぉやらっ、しょーいちさ、んあぁ、やめ、しょういちさんっ!」 「もっと、ちゃうの?」 「ち、ちが・・・。」 「ああ、こっちは素直や。」 自身を飲み込ませた下腹を撫ぜてやれば、結合部がぎゅうっと絞まった。中は甘えるようにくるくると蠢いて歓喜で濡れている。 「も、や、です・・・っ。」 真っ赤に染まった目元からぼろりと塩辛い雫が落ちて、今吉から視線を背けるものなので、流石に虐めすぎた、なんて内心舌を出す。 「ん、月ちゃんかわええ。もうちょぉ頑張って。」 「んっ、う・・・。」 あは、と今吉の肩に縋って熱い息を吐いた伊月は、しなやかな脚で今吉の腰を巻き、ぱさついた黒髪の毛先を弄び、ゆうるりと腰を揺らした。 「ちょ、俊っ。」 「ちゃんと、支えてて、ください。」 首筋に腕を絡め、きゅっと絞めた中からどろりと溢れたそれは今吉の脚を汚した。 「んっ!」 ぐちゃっと前立腺を掠って奥深くを刻むように腰を揺らせば、また甘く耳元で喘いで翻弄して来る。 「あっかんっ、も、俊!」 「ん、ぅあ、やんっ!」 ごるりと擦られたのが効いたか、くあと喉を仰け反らせ、は、は、と短く呼吸を刻みながら、焦点の合わない視線が本の背表紙をなぞるように降りると一度瞼が伏せられ、ゆるゆると持ち上がった睫毛の隙間から蕩けた黒曜石が覘く。 「ぬ、いて?」 振れる指先を下腹にやって、中に吐かれた熱を確認するように結合部にとろりと滴ったそれを脚に擦りつけた。 「月ちゃん、視界の暴力って知ってる?」 「あ、の、え、あの、ちょっと、なんで、またおっきくな・・・や、もーむり、です、ってぇ・・・。」 「ん、しんどいやろからベッドでええね?」 「いあ、忘れちゃ・・・。」 じゃくりと邪悪に中で吠えたそれにびくりと痩躯は撓る。ひ、と綺麗に啼いた青年の肢体を媚態で染める。 「ぜーんぶ、忘れてまえ。」 「しょ、翔一さん。」 「うん?」 今だけ、と囁く愛人が、からりからりと運ばれ揺れる刺激に喘ぎながら訴えるのは。 「翔一さんの事だけっ、考えたい、です・・・。」 それだけは忘れさせないで。 無防備に身体を預ける伊月を、また今吉が容赦無く貫けば、悲鳴というには甘い唄声が部屋を濡らした。 今吉探偵事務所、明日は休業予定。 それでは象牙の船に銀の櫂で、ちょっと月夜の海まで。 |
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やっぱ遠慮なくえろが描けるってこの二人かなって。スランプ続行中ですよ。とりあえず描いてみる的な。八十大好き。
2013年3月14日 18:24初出。
ものごっついスランプ中に描いたやつ・・・。このシリーズは凄く自分の状態が反映されやすいと実感したお話でした。
20130516日向誕生日おめでとう!