不自然な地鳴りと声と、そして蛙の置物。











今吉探偵と伊月助手と花宮助手とクトゥルフ神話。D












さて一旦状況説明すんで、とテーブルを指先で叩いたのは今吉。
「横井の死体をもっかい見ときたいけど・・・。」
「SANチェックしたの覚えてますよね?あの時は時間短縮と検証に走ったのであえなくスルーになりましたけど、次観たら5以上の数値叩き出してる方は気絶しますよ?」
「やんな。近寄るの止めよか。夏やから腐敗も早いし。」
「俺のSAN値削らないで!!」
ほな状況把握いくで、と合図に伊月はメモを取る。
「えっと、まずは150年前に島で何かがあった、ですね。これは白江の手帳から得た情報です。それから72年前の高山イチ。これは大佐原宅の古新聞から。両者と詳しい話は今のところ出来ていません。ハマ婆と高山はおそらく同一人物ですが、証拠はありません。おそらく白江は森に住んでいるかと。現在島民はその白江を捜索中。横井殺害の被疑者は状況で観れば白江ですが、愛香の存在が気になりますね。愛香の髪飾りは横井の手にありました。生活反応から察するに、横井は死んだ後も殴られ続けて死体の損傷が激しい。」
「大佐原宅の井戸はクトゥルフ的な何かだな。KP、現在時刻は?因みに現在地は?」
「四つ辻の小屋にしとけ。」
「了解す。えっと、9時から移動して話して、ロール一回、更に移動ですから10時30分すね。」
「更に愛香が月人に懐いてべったりです。」
「愛香やな、問題は。一回松坂家に戻るか。朝飯か昼飯食わんと雨宮倒れるやろ。」
「はいはい。更に30分。11時で理恵子が昼食の準備中です。」
「手伝う。」
「理恵子の手際についていけますかね?」
「手伝いが無理なら運ぶか何かの名目で月人は台所待機。異物混入は勘弁して。」
「あんたら普段どんな食生活してんすか。」
「食えるときに食えるもんは食うって感じか。朝食は月人の持ってた保存食か昨夜の残り物ってとこだろ。」
「昨夜の残り物だったら幸運ロールしてましたけど、保存食ならロールは無いですからね。」
「昼飯食い終わるんは何時や?」
「13時でいいんじゃないすかね。」
「了解や。大佐原の井戸調べる。」
「他にも家とかあるのにー。」
「どうせ白江捜索で誰もおらんやろ。蓋壊すで。なんかおるわ。」
「クトゥルフ的な何かだよな、それ。」
「ですよねー。」
「じゃ、移動して30分、蓋の破壊には?」
「物置に農機具あるんやろ?シャベルやら鍬で壊せるんちゃう?」
「あーあ、やっちゃった。14時です。」
「ん、井戸の中は?」
「懐中電灯用意してます?」
「ペンライトくらいならいつも持ってるよ。」
「あんたらの私生活一回覗いてみたいっすわ。はい、井戸の中説明行きますよ。直径は二メートル程度。井戸の底をのぞくと、水の代わりに、なにかクリーム色のモノが底に溜まっているのが見えます。」
「あー!!」
「やっぱ来よった・・・。」
「それの大きさは不揃いですが、ほとんどがレモンぐらいの大きさと形をしたもので、井戸の底を一杯に埋め尽くしています。よく見ると、その卵状のものは蠢いています。節のようなものがあり、身体をのばしたり縮めたり芋虫のように動いては、位置を変えたりまわりの自分と同じものをかき分け奥へ潜ったりしているのです。その行動は無秩序で無限に繰り返され、まるで無意味に見えますが、それでいて魂の奥にジワジワと忍び込むような嫌悪感を覚えさせます。はい、SANチェックどーぞ。」
「うわあああ。」
「1d+3っす。」
「月人7・・・。」
「吉本7や。」
「雨宮9!?」
「うっわぁ。皆さん悲鳴が上がってますね。アイデアロールどぞ。」
「待って待って待って月人絶対なんかうわあああちょっ。」
「因みに皆さんは、その意味を理解する前に、頭の中に違和感を感じます。自分が認知していないのに勝手に頭の中にイメージが浮かび上がり、目を開けているのに何も見えず、何も音はしていないのに頭に轟音が響き渡ります。記憶の雑音と混乱は窓に豪雨が叩きつけるように精神に襲いかかり、翻弄されるままになります。」
「クトゥルフらしーじゃねぇか。雨宮24だ。」
「吉本は35やな。」
「ううう。月人43・・・皆成功しちゃってどうすんの・・・。」
「はい、SANチェックですよ。1d+3で。」
「月人5・・・。」
「雨宮5だ。」
「吉本7。」
「月人と雨宮は気絶。吉本は悲鳴です。」
「どっちがマシなんやろ・・・。」
「このとき皆さんの脳裏には、とてつもなく広い海に漂うプランクトンたち、巨人の死体からわき出るウジ虫、大樹から舞い落ちる葉といったイメージが浮かびあがり、ここが自分のいてはいけない場所であることを痛感し始めます。なんとなく自分が招かれざる客であることだけを察知します。」
「物置にガソリンあったな。燃やす。」
「幸運ロールで行きますか。」
「ロールいんの!?助手気絶で使いもんならんのやけど!?54で失敗やねんけどおおおおお!!!」
「そこに松坂理恵子が通りかかりました。」
「来んなああああああ!!!!」
「『止めてほしいのだよ。危ないのだよ。』と吉本さんを心配そうに見つめるのだよ。」
「あかんあかんあかん!!助手使いもんならんのやって!!ええ加減起きろやガソリンぶっかけるぞ!!」
「ガソリンの匂いで助手二人覚醒ってとこですか。」
「『燃やすんですか!?燃やします!!』幸運ロール!24!月人成功!!」
「雨宮は理恵子を問い詰める!『なんでこんなもんがこんなとこにあんだよ!?何だよこれは!!』。」
「うむー、まあそう来るでしょうなー。ほんでは、松坂理恵子は松坂愛香が人間ではないことを認めました。」
「やっぱりかあああああ!!!!」
「『しかし、それだからと言って、すぐに悪しき存在と結びつけるのはやめて欲しいのだよ。』。」
「『愛香のような存在は他にどこにいる!?』。」
「『私もそんな存在のひとつなのだよ。』。『誰がそうであるかとか、そんなことには何の意味もないのだよ。ただ、愛香以外にもいるということだけは間違いないのだよ。』と、言葉を濁すのだよ。」
「『お前は何を企んでいる。』。」
「『私の望みは、このまま皆さんを水野さんの船に乗せて、本土へ帰すことなのだよ。』。」
「それがほんまやとしても、多分途中で船を沈めるか何らかの形で消されるでこれ。」
「一気にホラー展開になってますね。」
「理恵子は更に言葉を重ねるのだよ。『愛香は人間じゃない。けど、一生懸命に人間のように生きようとしてきたの。そうでもしなければ、この世界では生きられない・・・人は自分とは異質のモノを受け入れてはくれないから。でも、どうして?どうして、自分と違うものを嫌うの、殺そうとするの?この世界には人間とは違う生き物がたくさんいる。じゃあ、そんな生き物たちも殺さなければいけないの?違うでしょ?人間は、多くの生き物たちと共存している。もしかすると、愛香はこの世界とは違う世界から生まれたのかもしれない。自然の生物とは、あまりに違いすぎるものね。けど、だからといってあの子を否定してしまうの?私たちは本当に共存できないの?』。」
「『モノによる。現に愛香は学校へは行けへんかった。横井に好かれてもおらんかった。殺すんは極論やけどな、それは自衛本能や。生きるためやったら人間は人間すら殺す。』。」
「『白江の件は詳しくお聞きでしますか。』。」
「まあ、出来ます。井戸から火柱とキイキイ悲鳴上がってますけど。」
「放置で。」
「血も涙もねぇなこのひとたち!!」
「『白江もそうやって殺そうとしたんか?』一応生きてるんやろ?」
「それメタ・・・。まあいっか。」
「では白江の事件についてです。『あれは不幸な出来事だっのだよ。民俗学の研究をしていた白江さんは、調査のためにと言って、我々に黙って涸れ井戸の中を調べてしまったのだよ。そして、井戸の底に眠っていた、あの子に取り憑かれてしまったのだよ。その結果、白江さんはあのような姿となってしまい、人間の心を失ってしまった。けど、あれはあくまで事故なのだよ。正しい共存の道を進めば、愛香のように――可愛い子でしょう?――あの子のように、本当に普通の子として生きられるのよ。』。」
「愛香怖いつってんじゃん!!てかあの子どこ行った!?」
「今も月人の隣にいますよ?」
「なんでええええ!?逃げてよおおお!!!」
「だってゆってくんないんすもん。付いてくしかねっしょ。」
「・・・白江の件について理恵子が持っている情報は他にあるか?」
「はい。『白井さんの魂は『出来損ない』のおかげでねじ曲がってしまっていた・・・でも、だからといってかけがえのない命・・・私たちには殺すことは出来なかった。横井さんが殺されたのは、もしかすると私たちのせいかも知れない・・・。もっと、私たちは白井さんを受け入れてあげるべきだったのかもしれない。私たちの態度が、彼を姿だけでなく、魂まで歪ませてしまったのかも・・・。』。」
「よし、白江は出来損ないや。言質取った!『理恵子さん、他に言いたいことはあってですか?』。」
「『この島のことは秘密にしておいてくれさえすれば、何も望みはしないのだよ。出来れば、私たちと一緒にこの島で生きて欲しいと思っていましたけど・・・。この島には、普通の人が必要なんです。少ない島民と本やラジオだけでは、人間の本当の素晴らしさを教えることは出来ないんです。横井さんは、愛香にいろいろなものを残してくれました。そして、愛香も横井さんを本当に愛していました・・・。』。」
「ごめ、愛香と距離置かせて・・・。愛香から少し月人は離れます。」
「はい。ちょっと寂しそうに月人を見てますね。」
「勘弁して!!」
「お帰り願えるか。ガキの存在はここじゃ邪魔になる。」
「はいはい了解です。『月人お兄ちゃん、ばいばい。』。」
「だからああああ!!!」
「ふむ・・・。『秘密か、それは無理やな。言い様からするに、お前ら全員グルで誘拐事件起こして横井も殺した。人間の本当の素晴らしさ、とやらはわからんが、月ちゃんの愛は愛香には勿体ない。』。」
「『さりげに惚気んな。』っと。」
「さて、どこから突きます?」
「横井と白江の関係からや。出来損ないが横井と連絡とっとった痕跡はある。蛙の置物と殺人現場からの逃亡な。」
「じゃあそこからですね。『横井さんと白江さんは何度か会っていたようですが?横井さんも愛香を愛していたようには見えませんでした。横井さんもどう見ても情緒不安定に見えましたし。』。」
「理恵子は言葉を無くしたのだよ。」
「愛香が登場します。」
「なんでだあああ!!!!!嫌がらせかああああ!!!!」
「その脇には、何かを抱えています。上半身しかなく、下半身の部分には不気味に蠢く管のようなモノがイソギンチャクのように無数に生えており、わずかに血を滴らせています。」
「グロが前触れなく来るな・・・!!」
「松坂理恵子が窮しているのを見ると。」
「『ねえ、なにグスグスしてるの? 今度はさぁ、勝手なことをしないように足だけじゃなくて、手も切っちゃおうよ。あっそうだ・・・何も見えないように目も潰しちゃって・・・でも、しゃべれないと退屈だから舌を抜くのはイヤだなぁ・・・。』と、まるで夕御飯の献立について話しているかのような口振りで話すのだよ。」
「やっぱ横井の脚って切られたんじゃん!!」
「すると、そんなグロい物体は。」
「『ひとつは俺のものなのだよ。俺の身体なのだよ。俺の。そいつがいいや、そいつが、そいつそいつそいつ。』と月人を指差します。」
「もういやだあああああああああ!!!!!」
「おーい、伊月のリアルSAN値やべぇぞ。」
「『おい、早くするのだよ。乾いてしょうがないのだよ!』。と、耳障りなしゃがれ声で喚きました。」
「そんな何かを見て、松坂愛香は。」
「『うるさいのだよ。『出来損ない』のくせに。あれは愛香の妹のエサになるの。何でも言うことを聞く、私の妹を作ってもらうの。』と言いながら、『出来損ない』を高く持ち上げると、下半身に生える管の間に手を突っ込んで、ギリギリと引き裂こうとするのだよ。それでも力が足りないためなかなか引き裂くことはできず、『出来損ない』はその痛みのため身の毛もよだつような悲鳴を上げます。」
「え、出来損ないつった?え?白江まさか捕まった?」
「やがて思い通りに引き裂けないことに頭に来たのか、彼女は足下に思い切り『出来損ない』を叩きつけると、まるで害虫を潰すかのように、躊躇なく何度も踏みつけます。何も抵抗の出来ない『出来損ない』は、地面の上で血まみれの肉の塊と化し、そのまま絶命しました。」
「うっわ。うん、無理。愛香無理。横井の精神よく情緒不安定で持ってた・・・。」
「そんな松坂愛香の様子を見て、松坂理恵子はツカツカと彼女に近づくと裏拳で思い切り殴り倒します。これまでの松坂理恵子の姿からは想像できないような凄まじいパンチ力で、松坂愛香の身体は地面に倒れたうえ、勢いでゴロゴロと転がります。」
「ええええ。仲間割れ的な?」
「松坂理恵子は仮面のように無表情な顔で倒れる松坂愛香を見下ろし、『これだから生まれたては・・・人間の心理というモノを理解していないのだよ。』と呟くのだよ。」
「本性出しやがったな。」
「っすね。戦闘行きます?」
「戦闘か・・・。」
「いや、雨宮はパス。殴られたら死ぬわ雨宮。HP10だし。」
「そうやな。ここは逃げる!井戸も燃やしたし。」
「はいはい。じゃあ回避ロールで。」
「くっそ。14、吉本成功や!」
「52!?月人失敗した!!」
「28で雨宮成功。」
「じゃあ、月人はDEXで抵抗ロールしましょ。」
「26で失敗ですけど!?」
「あらま。じゃあ誰か物理いきます?もっかい回避で。」
「ほいよ、13で吉本こぶし成功。」
「15!月人回避成功!」
「はいな。二人に助けられて無事に逃げましたってとこすね。時刻はロール四回と会話で17時ってとこにしましょうか。井戸に火がつくと、地の底から『ブォーン、ブォーン』という管楽器のような低い音が響き始め、その音に呼応するように井戸の周囲に強い地震が発生します。皆さんは足が痺れるような感覚を覚え、頭の中でガ〜ンガ〜ンと鐘が鳴り響いているように耳鳴りがし、さらにはひどい頭痛にも襲われます。POW×5でロールして下さい。」
「うげ。吉本は40やから・・・32!成功やな。」
「月人は44か。11!やったクリティカル!」
「35かよ・・・。お、15で雨宮成功。」
「なーんだおもしろくねーのー。松坂理恵子と愛香のほうは、顕著な影響を受けています。二人は何か見えないモノに怯えるように頭を抱えて、その場でガタガタと震えています。すると、地震が徐々に強さを増したかと思うと、それに反比例するように井戸から立ち上っていた火柱は徐々に小さくなり、やがて消えます。その直後、地響きと爆音の共に、井戸から噴水のように何かが勢いよく吹き出します。」
「うげぇ!?」
「天高く吹き出されたそれ重力に従い、バラバラと皆さんのつーか島の頭上に降り注ぎます。」
「辻の廃屋に逃げる!!」
「じゃ、幸運ロールどうぞ。」
「32で吉本成功。」
「51!月人成功です。」
「65・・・雨宮失敗・・・。」
「花宮さあああああああん!!!!!」
「雨宮さんの体になんか引っ付きます。」
コロコロ。
「あ、二体っすね。」
「今振ったのそれか!?取れよ誰か!!」
「精神力取られますよ。はいはい取って取って。」
「ロールは!?」
「STR×3でいいかな。」
「12!一つ取れた!」
「はい、POW一つ吸引されます。もう一体。」
「くっそ。32!失敗した!」
「はい、残るPOWは5!」
「21!取れた!!」
「ちぇー。地面に落ちたそれらや、火のついたそれは、無力に蠢きながら地面に溶けるように死んでいきます。脆弱な身体しか持たないそいつらは、単体ではぬくぬくと暖かい涸れ井戸の中でしか生きられないのですねー。松坂理恵子はパニックに陥り、地面に這いつくばり死んでいくそれらを拾い集めようとしますが、それは無駄なことです。松坂愛香はそんな彼女の様子をぼんやりと見つめ、放心状態に陥っています。一応皆さんの勝利っすよ。無事に辻の小屋に逃げることが出来ました。」
ふはぁ〜・・・と事務所内が溜息で満ちた。
「月ちゃん、珈琲お代わりちょーだい・・・。あと確かこないだもろた栗羊羹かなんか冷蔵庫にあるわ。腹減った・・・。」
「俺も。」
「俺もです・・・。餅焼きます?」
「あ、いっすねー。」
「頂きます。」
「ちょぉKPとサブは後でツラか貸せや?」
「「嫌です。」」
「今度試合組んで潰しとくか。」
「やりすぎないくらいでお願いします花宮さん。」
「ちょっと伊月さんキャラぶれてるぶれてる!!」
「ブレもするわ!!はい、紅茶のお代わり要るひと!」
「頂きます。」
「ありがとうございまっすー。喋りすぎて喉乾きますわー・・・。」
「そのまま干からびてまえ。」
「そしてパリパリに砕ければいい。」
「煎餅の材料にされて腐らせてしまわれろ。」
「俺泣きそう。いいよね真ちゃんは自分で栄養作れるから!!」
「誰が葉緑素を持っているのだよ。」
ふいと高尾は息を吐き、そいでは準備いっすかー、と席に戻ったプレイヤーを見る。聊か疲れているが、まあまあこんなものだろう。
「時刻はさっきの騒ぎでさらに一時間取られて18時辻の小屋に退避です。こっからどうします?外はまだ変なもん降ってます。」
「ほならこのまま白江張る。来るんやろ?横井のメッセージを取りに。」
「メタいわー。じゃ、時計進んで、日の沈みきった20時で。」
「降り止んだ?」
「まだっすね。這う這うの体で誰かがやってきました。」
「ロールいるか?」
「いんないっす。白江剛ですね。彼は横井治がどうなったか心配をしています。そして、もし彼が無事であれば必ず蛙の位置を変えることで自分にメッセージを送るだろうと考え、島民の目を盗んで廃屋に様子を見に来る訳ですよ。」
「成程、初日の夜に出かけたんはそれやな。」
「ですです。先にあんたら井戸燃やすんすもん、白江必要ないかと思いましたよ。白江剛は探索者たちと遭遇すると最初は逃げだそうとしますが、相手が島民でないことがわかると逆に話しかけてきましたー。その言葉は震え、落ち着きのないものです。手には錆びた鉈のようなものを持っています。」
「えっと、『危ないから鉈は仕舞ってくれませんか?』。」
「手放そうとはしませんね。時々、会話が食い違ってしまったり、人のことを無視してどんどんと話を進めたりします。精神分析か医学ロールどうぞー。」
「んー、精神分析とるんわっせとったなぁ。月ちゃん頼む。」
「はい。54で成功です。」
「了解す。彼が神経衰弱に陥っている事が判明しました。」
「共有で。『出来損ない』や空から降ってるあれが話のキーでいいかな?」
「はいな。彼の声は次第にどもり、上擦ったものになり、過度に興奮をはじめ、呼吸が異常に激しくなります。」
「まあ、この島の状況と白江の境遇を考えれば妥当やな。」
「彼は18年もこの島で暮らしてきた結果、多くの秘密を知っていますよ。」
「まず、『島民の正体は何だ?』そういえば横井の写真には島民の姿はなかったな。これは複線か?」
「そっす。『島民の中に、人間によく似てはいるが、まったく違うバケモノが潜んでいる。誰がどうだかはまではハッキリしてませんが、横井治を虜としていた、松坂愛香は間違いなくバケモノだ。』『島民たちが人間を島に誘い込み、『まれびと』として虜にする。』『その目的は、バケモノの糧とするためであり、『まれびと』となった人間は十年近くかけて徐々に精気を吸い取られているらしい。』『この島の人間たちの目的は、そのバケモノを守り育てること。』ってのを話してくれます。話を信じるかどうかは皆さん次第で。」
「さっき愛香と理恵子の様子見たがな。空から降る一億のナントカもばっちし見たがな。」
「じゃあ、情報は鵜呑みすか?」
「いや、どうやろ。」
「えっと、人間に似たバケモノは見ましたね。」
「誰がどうかはハッキリしてねーな。松坂母娘はバケモノ。ハマ婆は多分ちげーだろ。」
「『まれびと』を虜にする、は愛香と横井の様子で明らかですが。」
「バケモノの糧は不確定要素やな。まあ、メタると確定なんやけど。」
「バケモノを守り育てる、は松坂母娘の様子でいいのか?」
「ほなら仕入れた情報やら体験した現象からで大概は信用に足るな。」
「『涸れ井戸のアレを燃やすのだ。俺はアレに近づくことは出来ないのだよ。おまえ達が燃やすのだよ!』。」
「あ、もう燃やしちゃってたwww」
「すると、そんな白江剛の叫びに混じって、しゃがれた子供のような声が聞こえてきます。『寝ているうちに。よけいなことを。このできそこないめ。』その声は舌足らずで、あまり日本語に慣れていないといった感じです。アイデアでロールどうぞ。」
「32で吉本成功。」
「35で月人も成功です。」
「16で雨宮成功。」
「はい。では三人はその声が初日の宴会で防風林のほうから聞こえてきた声であることに気づきした。その声が聞こえ始めると、白江剛は苦しげに呻いて蹲まります。そして、感電でもしたかのようにガバッと立ち上がり、そのままいつもの猫背の姿勢からしゃんとした直立不動の姿勢を取り、顔を大きく後ろに仰け反らせます。その胸のあたりにはバレーボールぐらいのふくらみがあります。そして、そのふくらみはゴソゴソと動くと、白江剛が纏うボロの上着を払いのけます。その下から現れたものは、醜く歪んだ人間の顔です。」
「「「ぎゃあ!!!」」」
「体つきは赤ん坊のようですが、頭の部分は異様に額が狭く、頭頂部も平らで、まばらに長い髪の毛が生えています。顔つきは成長した男のもので、濁った目には茶色い目脂がこびりついています。両腕は頭の大きさに比べてやけに短く、指もなく、セイウチのひれのような形をしてますね。下半身は白江剛の身体に埋もれて無くなってまして、ヘソより少し上のあたりで溶接したように同化してます。妙に出っ張った背骨はムカデのように不気味にうねり、白江剛の下腹部に伸びています。落とし子が動くたびに、その背骨は別の生き物のように蠢きます。」
「節足動物勘弁して・・・。」
「そいつは、白江剛の身体に抱きつくように向かい合わせでくっついているため、大きくのけぞって頭を逆さにして、御三方に不気味な視線を送ります。SANチェックどぞ。」
「ううう。月人10・・・。」
「雨宮6だ。」
「吉本も10や・・・。」
「三人とも悲鳴っすね。」
「普通の反応だろうがよ・・・。」
「それはブラブラと逆さになった頭を揺らしながら、『こいつはバケモノだ。つかまえてしまえ。島のやつらのところに連れていけ。』と、言います。」
「白江はシロやん。問題はこの得体の知れんなんかやで?」
ですよね、と伊月は頷いて、だよなぁ、と花宮も同意。
「『こいつは人間じゃないよ。はやくつかまえなよー。』と、楽しそうに言います。ところが今度は、その言葉に白江が反応しました。いままで顔を仰け反らせて、苦しげに呻くだけだったのが、首に筋を浮かべ、歯を食いしばり、頬をブルブルと痙攣させながら、まるで鬼のような形相を浮かべて顔を元に戻します。彼は、血走った目で自分の胸に生える落とし子をにらみつけると、『誰が人間じゃないだと・・・このバケモノがっ!』と、叫び、自分の胸と落とし子の接合部に鉈を叩きつけます。」
「ちょおおおい!!」
「錆びて切れ味の悪い鉈では、一撃でそれを切り落とすことは出来ません。傷口からは大量の血があふれ、おぞましい悲鳴があたりを覆い尽くし、まるで悪夢のような状況が展開されます。白江は、大量の血が噴き出していることなど意にも介さず、右手で鉈を叩きつけ、左手ではそいつの頭を鷲掴みにして力任せに引き千切ろうとしています。そして、ゴギンという背骨が引きちぎられる音がしたかと思うと、それは彼の胸から切り離されました。」
「平然と状況説明止めてKP・・・。」
「これでも幾らかソフトめっすよ?白江は、その身体を高々と天に掲げ、『これで俺は人間だ。帰れるぞ、家に! 家に帰るんだっ!』と、叫んび、切り取った得体の知れない身体を遠くに投げ捨て、大の字になって倒れました。白江剛は死亡しています。ただ、その顔は晴れ晴れとしたものでした。」
「え、死んだ?」
「死にました。」
「えええ・・・念のため医学ロールしていい?」
「はいどうぞ。」
「あ、61で失敗か・・・。」
「まあ、別に追加情報ねーっすよ。」
「出血多量によるショック死なのだよ。」
「殴るぞ。」
「刺すぞ。」
「八つ裂きにすんぞ。」
「まあ、これで白江はシロだったって確認は出来ましたね。横井を殺したのは愛香で間違いないでしょう。状況証拠は愛香を犯人にしていますから。」
「やな。バケモンやったら4キロの三脚振り回せても不思議やないし。」
「じゃ、これからどうしますか御三方。」
「どないしょ。船は壊されとるし、電話も無いし。何かが空から降ってるし。」
「そろそろ吐き出し終わったのか、今後は微かにゴリゴリと聞こえてます。」
「うっわ・・・。てゆかもうこれ島中に消されるエンドか助かるエンドしかないよね。その音どこから聞こえてる?」
「聞き耳どぞ。」
「んー、41、吉本失敗。」
「11!やった月人クリティカル!」
「またっすか!さっきもクリティカル出てましたし、三人ともでその音が件の井戸から聞こえてくるのに気づきました。」
「時刻は?」
「んー。22時でどうでしょう?」
「真っ暗やんな・・・。『ペンライト忘れるんやないで。』。」
「『はい。』。」
「『解ってるよ。しかし変にライト点けて回ると島民に見つかるぞ。』。」
「『ほなら大佐原宅からかっぱらった懐中電灯をここに置いとく。』。」
「ちょwwwいつの間にwww」
「さっきやろなwww」
「そんじゃーシナリオは佳境ですよー?準備はいいですか、っとね!!」
準備させる気ねーくせに、と毒づいたのは花宮である。


続く。

***

まだ続くみたいですがどうしたらいいですか。なんか予想外にこれ好評なんですが!?座談会形式「www」とか出てくる。@→novel/1837640


2013年01月03日 17:36初出。

確かこの辺から私のSANが危うくなってたwww

20130118masai