テーブルトークは進む。順調すぎるほどに。












今吉探偵と伊月助手と花宮助手とクトゥルフ神話。B













「メタな事言うで。クトゥルフの基本は、人知を超えた存在や。神さんとか魔物とかが事件の正体や。」
コロコロ。
「はあ。」
コロコロ。
「150年の樹齢の樹木。出来損ないの人間。横井の挙動。島民の挙動。今、この要素で把握できるんは、150年前に島で何ぞやあって、この場合の何かは神さんや魔物やそれ関係な。白江て行方不明者もおったやろ。」
コロコロコロ。
「あれもPCと同じ『まれびと』だな。」
コロコロコロ。
「おう、『まれびと』や。この物語のキーやで。横井の言う事がほんまやったら、横井も9年前に貴多島に来た『まれびと』。白江は18年前に『まれびと』として、この島でなんか事件に出おうて行方不明なった、ゆうんがワシの見解な。横井もその轍踏む直前なんちゃうか。やから、時間、ゆう発言が出よった。」
コロコロコロ。
「島民全員はグルと考えて良さそうだ。何らかの意思が働いて島民を動かしている。キモはこの時点で愛香じゃないかと俺は踏む。」
コロ。
「横井の様子から察しますに、彼はそれに巻き込まれ、逃げたいと踏んでいるか、取り込まれたいと望んでいるかは半々、ですか。」
コロコロコロ。
「やな。あとは足を無くした原因は、ほんまに事故ったんかそれとも食われたか。」
コロン。
「食われ・・・って、それ突飛すぎやしませんか。」
コロコロ。
「愛香の存在がどうにも引っ掛かる。」
コロリ。
「成程、食われたはともかく、切り取られた可能性はありますね。吉本が訪れた事に対する驚き、吉本たちも自分と同じようになるかも知れない戸惑い、って所ですか。」
コロコロコロ・・・。
「本業さーん、そこまでにしてもらえませんかー。深夜回ってますよー寝て下さいよー。」
推理メタすぎるこのひとたちTRPG向いてない、と高尾と緑間は半ば真剣に思う。
「え、もうちょっと・・・。」
「寝ろ下さい。」
「KPがルールや。『遅いわ、寝よか。』。」
「わかりましたー。『おやすみなさい。』。」
「『おう、お休み。』で、寝たぜ、KP。」
「了解っす。雨宮さん起きて下さい。」
「おっまえええええ!!今の推理中コロコロやってやがったのそれかあああああああああ!!!!」
「ですですwwwはい、トイレに起きて下さい。」
「せめて男三人蚊帳の中で寝苦しくて起きたとかにさせてくれ。」
「あ!!」
「なんですか翔一さん突然。煩い。」
「月ちゃんに手ぇ出すんわっせとった・・・!」
「永眠しろ下さい。」
で、メッタメタな問題発生しました、と高尾が人差し指を示した。
「鉛筆って折れるっていうか、割れるって、知ってました?」
「おい、まさか。」
「一年の計は元旦に在りってよく言ったものだと思いません?」
「・・・壊れた?」
「ポキ、じゃなくってバキって縦に割れるんすよ、ご存知でした?という訳で、突然で申し訳ないんすけど、技能値66超えてるやつあるっしょ、初期じゃなくて技能値で割り振った技能。」
「幾つか。」
「60以下にしてください。すんません。他は適当に割り振って頂いて結構です。11がクリティカル、66がファンブル扱いになります、ここから。100面ダイスとか書き手は持って無いんで。」
無計画にやってっからこうなんだよ、と言葉が沁みつつ、PCメモの数値と技能を足したり割ったりする。因みに基本的に数値の低い雨宮シンこと花宮真のPCは弄れるほど幅が無かったが。
「はい、ではシナリオ進めまっす。吉本と月人がいちゃつきだしたんで部屋から出たんでしたっけ?」
「高尾、ぶん殴るよ?」
「さーせん!」
素晴らしいパスセンスを持つ柔軟な手首が、先端が光る万年筆を持ってくるっと回されたのに高尾はホルドアップ。シナリオ進めます!と宣言した。
「雨宮が月に照らされる暗い廊下を歩いていると、横井の部屋の前を通りかかります。部屋の木戸は少しだけ開いていました。隙間からはくすくすと笑い声が聞こえています。どうしますか?」
「・・・覗いてくれと言わんばかりだな。ロールいるか?」
「いえ、どぞ?」
「悪い予感しかしねぇな。覗く。」
「雨宮が覗き込むと、そこでは衝撃的な光景が繰り広げられていました。中では一糸まとわぬ姿の松坂愛香が、上着のボタンを外され胸をはだけた横井治の身体に愛撫をしているのです。松坂愛香の白い裸体が月に照らされうごめき、それは妖艶な光景です。横井治は目を半開きにして、ぼんやりとした顔つきでされるがままになっています。」
「うおおい!?」
「ロールしますよ?」
「どれで。」
「幸運か忍び歩きで。」
「し、忍び歩きはさっき数値弄ったから・・・まず幸運・・・12!!」
「ちっ。」
「舌打ちしたか?今。」
「そのまま覗き続けるか、部屋を離れるか覗きを続けるか選択できまっす。」
「まこっちゃんの趣味に覘き・・・。」
若干のからかいの声だったが、ダンと革靴で足袋を踏まれて今吉は蹲った。
「・・・部屋に籠ってエロイ事してるだけだろ?しかし相手は恵理子では無く愛香・・・やっぱこっちがホンボシか。もう少しだけ見させて貰うぞ。横井に声を掛けることは可能か。」
「うわ、そっちに進みます?えっと、5分もすれば愛香は満足した様子で横井治の隣に裸のまま寝入ってしまいます。・・・声かけます?」
「どうすっかな・・・。あ、うん、やっぱ声かけるわ。何も知らない振りで、『横井さん、起きてますか。』で。」
「うわ。」
「なんだよイイコちゃんが・・・。」
若干引いた伊月には、花宮からぎろっと剣呑な視線。
「はいはい喧嘩腰止めてくださいって。横井は顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら『出ていけ!すぐに出ていけ!私のことはほうっておいてくれ!』と取り乱してまっす。愛香もその辺でほったらかされてます。」
「・・・変わったな。」
「え?」
「宴会の時の一人称は『ボク』だった。正常じゃねぇ。ノイローゼ気味ってとこか?」
「ロールなしで情報ゲット止めてくださいよまじサトリまじ嫌い。松坂愛香は裸のままで恥ずかしがることもなく、屈託のない笑みを浮かべて横井治と雨宮を見比べています。騒ぎに気づいた松坂理恵子が部屋にやってきて、横井治を一人にしてやってくれと間に入りました。」
「理恵子が邪魔だな・・・。」
「はい、吉本さん、月人さん、いちゃついてないで幸運ロール。聞き耳でもいっすよー。」
「いちゃついとったら聞き耳使えんよな。」
「ちょっとまじ黙って下さいませんか翔一さん。24・・・月人成功。」
「吉本は、と。・・・52?あ、失敗。」
「ちょwww女神wwwんじゃ、月人は部屋の外での騒ぎに気付いたみたいっすよ。」
「『カケルさん、何か聞こえました。』って所ですか?」
「せやね。『えー、ほんま?ええとこやんにー。』。」
「ナニしてんすかwww」
「共有すっからな!『二人とも起きろ。』たたき起こす。狸寝入りは殺してから起こす。」
「どーやんすかwww共有したらどうします?」
「どうも様子を聞くに、理恵子も愛香と横井の関係を知ってる・・・。理恵子さんに話は聞ける?」
「はいな。真ちゃんどーぞ。」
「『愛香は横井さんのことを愛しているのです。それは父親への愛とも、異性への愛ともつかない・・・』と言って言葉を濁し、それから『すみません。今晩のことは忘れ下さると助かるのだよ。お願いします』と頭を下げたのだよ。」
「これで初日の夜は終わりでっすー。」
「やっぱ愛香がホンボシやな。」
「問題はどこから来てるかだ。元になったシナリオが解れば・・・。」
「ラブクラフトは検索出来るほど読み込んでへんねん・・・。」
「そんな知識偏った上司いんないです普通。じゃあ、愛香の動向に気を付けながら次の日は松坂母娘と一緒に浜辺遊びですっけ。」
「そうですよー。準備いっすかー。」
「ん、了解や。」
というわけでシナリオ進めろKP、とプレイヤーの言葉に高尾は一度紅茶を含んで、水着持ってきました?と笑った。
「あ、それは忘れてた。んー、でも普段着か・・・日焼け酷い?」
「まあ、南の島の真夏ですから。」
「日焼けすっと赤くなって痛いんだよな・・・。」
「あんたらどこの女子ですか。普段着で行きます?」
「せやな。半袖半ズボンで、海入るんやったら適当に脱ぎ散らかしー。『月ちゃんあんま脱いだらいかんよー?』。」
「『何でですか。』。」
「昨夜昨夜。」
「そのネタ引っ張るんですか!?」
わかりましたよもー、なんて伊月が背凭れに沈むので、ガチで経験あんじゃんこいつ、と花宮は口元が引き攣る。
「はい、じゃぁこの日は理恵子と愛香と一緒に海辺で遊ぶことに。横井は足の事もあって同行はしません。」
「『横井さん行かないんですか?』念のためな。」
「松坂母娘が結構強引なのと、横井本人も体調が悪いと断りますね。」
「ふむ。」
「海部は東側が岩場で、皆さんの他には海水浴客もいませんしね。素潜りで魚獲れたりしますよ。」
「松坂母娘の様子は?」
「松坂理恵子は一児の母とは思えない若々しい姿で、水着姿が魅力的。彼女はまるで少女のようにコロコロと楽しげに笑い、皆さんと一緒に遊びます。そして、松坂愛香はゴムまりのように探索者のまわりで跳ねて転んで、疲れ知らずにはしゃぎまわります。水着には「まつざかりえこ」と書かれてますから、理恵子の古の水着を着てるってことになりますねー。昨晩の松坂愛香の行動を目撃してしまった探索者は、複雑な気分でしょうが、松坂母娘は昨日のことなど無かったことのように無邪気にはしゃいでいます。まるで、昨晩のことは悪い夢であったかと錯覚させるほどです。」
「女性の肌は隠れているほうが俺には魅力的だなー。」
「伊月さん、変なカミングアウト止めてwww」
「スカートは長いほうが良い。黒のタイツとか。」
「えー?モダン女性もよぉない?短い髪と露出される膝ゆうのもなかなかやん?」
「あんたら欲求不満か。昼時になると、水野国彦が大きな冷えた西瓜をふたつほど持って現れます。水野国彦はこれで西瓜割りでもしてはどうかと提案します。やります?」
「やりたい!」
「あとは、水野国彦は魚扠も持ってきています。頼めば貸してくれるんで、東側の岩場で魚獲りに挑戦つーのも出来ますよー。」
「まじで。」
「あんたらどんだけ遊びに飢えてんすか。」
「遊びじゃなくて夏遊びに飢えてんの。『西瓜割りですカケルさん目隠しさせろ下さい!!』。」
「そっちかーい!『ええよ、付き合うたろ。・・・て回しすぎやろ月ちゃん・・・!!』。」
「『魚獲ったら捌いて焼いて食うか?』だな。」
「何気にめっちゃ満喫してますね。松坂母娘も遊ばせてやって下さいよ。」
「あ、そか。『愛香ちゃん、西瓜食べる?』とかで大丈夫?」
「『理恵子さんも横井がおるとはいえ、女手一つで愛香ちゃん育てるん大変やったんちゃいますの。』とかでええ?」
「そんな風に話をしながら昼食は終えます?」
「せやな。ぶっちゃけた話、もう島に用事は無いから、適当に遊んで明日帰ろか、とか相談しつつちゃうか。」
「『もう帰ってしまうのですか。』と理恵子は話しかけるのだよ。」
「愛香ちゃんもじーっと見てますよ、御三方。」
「『だから今日だけはいっぱい遊ぼうか。』ってところでいい?」
「妹ちゃんか・・・。」
「昨夜の事が無ければですね。あんまりべったりはしたくないです。」
「なるほど?そんなこんなの夕方に、愛香ちゃんの姿が無くなってますけど、月人さん?」
「なんで俺だ!」
「え、なんか懐かれそうだったから?」
「夕方の海辺だろ?溺れてたりしたら危ない。『探しましょう。』と提案します。」
「普通はそうやな。」
「『もしかしたら何かの用事で家に帰ったのかもしれないのだよ。』と理恵子は応えたのだよ。」
「これはじゃあ、一旦家を確認してから、って解釈で良い?」
「じゃあ、帰るか。」
「『おっしゃ、家に戻ってなかったら本格的に捜査すんで。』と助手には耳打ちな。」
「『了解。』。」
「『解りました。』。」
「じゃ、目星ロールどぞ。」
「「「いきなり!!」」」
「しょうがねェ・・・。15。雨宮成功。」
「月人は、26・・・えっと、さっき数値弄ったから・・・あ、成功しちゃった。」
「しちゃった、って。吉本は?」
「32。失敗。」
「使える助手でよかったっすね。」
「黙れや。『二人とも何か見たん?』やな。」
「はい、横井の家から何かが飛び出して東側の森に走り去るのが見えました。かなり距離があるので林の中に入られて見失いますが。」
「「げっ。」」
「家に入ってみると・・・。」
「ちょぉ!嫌な予感しかせんねやけど!?」
「不気味なまでに静まり返った家の玄関の廊下。水着の上に着た白いTシャツを血で真っ赤に染めた松坂愛香がぼんやりと立っています。」
「あー・・・らしくなってきやがったか・・・。」
「目の下あたりに誰かにひどく殴られたらしい痣がついており、髪飾りのゴムも片方なくなって髪の毛が垂れ下がっています。その姿を見て、松坂理恵子は何も言わずに彼女を抱きしめます。厳しい声で『ここでじっとしていて。』と愛香に言うと、彼女は家の奥へと向かいます。横井治の部屋へ行こうとしているのです。どうします?」
「追いかける。」
「だな。」
「それしか選択肢ないやろ。」
「はい、了解しましたー。横井治の部屋では凄惨な光景が広がっています。部屋中に飛び散った血と、血塗れの三脚。」
「ぎえっ。」
「無惨に頭を割られ、全身にもひどい打撲を受けた横井治の死体がそこにはありました。畳にこびりついた血の足跡は入り乱れ、部屋で行われた凶行の様子を物語っているかのようです。」
「医学か応急処置ロール!」
「無理です。横井治はすでに喋ることは出来ません。ガクガクと顎を動かしながら、血まみれの手を書き物机に置いてあった本に置いて、そのまま事切れます。」
「あ・・・。」
「じゃあ、月人は今、横井の様子を確認しようと駆け込みましたね?」
「そうなるね。」
「だったら彼のダイイングメッセージを受け取ることができます。」
「お。」
「怪我の功名やん。」
「血まみれの手を書き物机に置いてあった本に置いて、そのまま事切れました。」
「あーでも結局死んじゃったじゃん!!」
「ではSANチェックどうぞ。横井治の無惨な姿を見た探索者は、0/1D3正気度ポイントを失います。なお、彼との旧友である探索者は、1/1D4正気度ポイントを失います。」
「「来た・・・!」」
「え、カケルさん大丈夫?え?月人は5ですけど。」
「9や・・・。」
「雨宮も9なんだけど!!もうやだこのPC!!」
「女神お茶目さんすね。現場検証やります?」
「やる。月人の医学でどこまで解る?」
「じゃ、ロールどうぞ。」
「15で成功です。」
「横井治の死体の様子ですね。完全に死亡しています。身体はまだ暖かく、死んでから間もないことがわかります。外傷が酷く、見たところ頭を強く殴られたことが死因のように思われます。ロール追加情報で、身体の打撲のいくつかは動けなくなってからさらに殴られ続けたものであると推測できます。横井治の右手の小指には、松坂愛香の髪飾りのが引っかかっています。この髪飾りも血まみれです。」
「スプラッタか。凶器は?」
「三脚には大量の血と、横井治の髪の毛が付着しており、これが凶器であることは間違いないようです。こっちは目星ロールでどぞ?」
「雨宮でいく。66・・・ってファンブル!?」
「あーあ。ペナルティどしよっかな。」
「月人もやってみていい?」
「どぞ?」
「21。成功。」
「わぁーお。じゃ追加情報行きます。三脚には血糊で手形が残っています。月人は手形が二種類あることに気づきます。ひとつは小さな子供ぐらいの手形で、もうひとつは大人の手形です。三脚の重さは約4kgあるので、これを凶器として振り回すには成人男性並みの筋力が必要でしょう。」
「子供・・・。」
「いや、重量がオカシイ。他には?頭カチ割られての血みどろやったら足跡とかないか。」
「畳の足跡は目星割る事の2か追跡で。」
「56・・・目星失敗や。追跡も吉本とってへん。」
「じゃあ月人行きます。23・・・目星失敗。追跡取ってないです。」
「雨宮は?」
「さっきファンブルってますんで、と言いたいところですが、こうも失敗されちゃうとなー・・・まあ、どぞ。」
「55・・・。雨宮失敗・・・。」
「わぁお。」
「では、次はアイデア割る事の2でロールするのだよ。」
「31!吉本成功!!」
「お。追加情報行きます。足跡は三種類ありました。一つは横井の足元にある血痕に繋がる足跡。足跡自体の動きも数も少ないでっす。で、その足跡の上をまた別の足跡が踏んで歩いてますね。」
「なるほど。横井が死んでから誰か動いたな。」
「本業さん勘弁してください。で、もう一つはあっちこっち動き回ってます。部屋の窓枠にも足跡が残ってますね。」
「それがさっき外出たっちゅーやつやな。情報共有な。」
「はい。」
「おう。」
「で、さっき怪我して髪飾りも無くした愛香の足跡はどれや?」
「メタいっす・・・。小さな足跡が玄関まで続いています。」
「ん、了解。二人おって、どれがやらかしたかは推理しもってやな。『月ちゃん、何受け取った?』。」
「あ、そうだ、何受け取ったの月人。」
「はいはい。横井治が最後に示した本ですね。奇妙なことに、横井治の部屋にはこの本以外に、本らしいものはありませんでした。内容は松尾芭蕉の生涯と俳句に関する本で、内容自体はさほど珍しいものではなく普通の書店で流通していそうな本です。出版年月日は約19年前です。本の最後のページには栞が挟まっています。その栞には、東京の大学の付属書店の名前が書いてあります。こんなとこかな。」
「来た!東京の大学で19年前ってことは、白江の痕跡!」
「『その本は大佐原さんのもので、横井さんが借りていたのではないのでしょうか。』と理恵子が教えてくれるのだよ。」
「邪魔やなー理恵子・・・。」
「他に調べられる場所はあるか?」
「写真家やった訳やし、アルバムとかそういうのやったら溢れてんちゃう?」
「あーもー!アルバムには、吉本と過ごした頃のものから古い写真が大事に保管されており、何度も見返したあとが残されていました!それ以外の新しいアルバムには、島の風景写真が納められていますが、島民の姿はいっさい映されていません。」
「うん?風景写真に転向した感じなのかな?」
「昔から写真が好きやったから写真家になったんやろ?やったら趣味のアルバムくらい無いとおかしい。ライフワークとビジネスワークは根本が一緒でも混じり合わんもんや。」
「だったら、最近の写真、特にこの島の写真、この島に来てからの横井は明らかにおかしい、ってな話だろ。」
「理恵子は突然の出来事に呆然としているのだよ。」
「ゆわれても。」
「愛香に話は聞けるか?足跡の様子から察するに、明らかに目撃者だ。」
「『あまり刺激をしないで欲しいのだよ。』と理恵子は心配そうなのだよ。」
「あーも、まじ邪魔だな理恵子!!吉本、言いくるめ!」
「言われて腹立てるんも阿呆らしいさかい、35で成功。『お母さんとしてのこころは判ります。でも横井はワシの友達やったんや、このまま無念はほっとかれへん!』。」
「成功しやがった・・・。サトリまじちくしょう。」
「髭の男が横井を殴った、と愛香は語るのだよ。喧嘩しているところに鉢合わせ、髭の男が三脚で横井を殴ったのを目撃したと、それを止めようと入って殴られた、と。」
「・・・『嬢ちゃん、髪飾りは?』。」
「あ・・・。」
「わからない、ときょとんと小首を傾げるのだよ。」
「髭の男は出来損ないって呼ばれてたあの男でいいのかな?愛香の説明は子供だからで済ませるにはちょっと引っ掛かる。」
「『理恵子さん、お巡りに連絡や。』。」
「『電話はありません。』。」
「『ほな、本土に船出す。』。」
「んー、水野に頼ることになりますね。」
「せやな。」
「船は重要な部品が抜き取られていて、あの出来損ないの仕業か、と怒り狂っています。」
「うえー。吉本って機械修理取ってますよね。雨宮さんも。」
「お。15。成功や。」
「あーはいはいあーはいはい!吉本さんが機械部分を調べてみると、見事に機関部の重要部品が外されてました!!もーこのひとたちやだー。因みに代替えがそう簡単に手に入る部品じゃないんで簡単には直せませんよ。」
「代替えの効かん重要部品を抜き取った、か。随分機械に精通しとる犯人やな。」
「メタ止めて下さい。そろそろ泣くぞもう!!」
「ほな、一旦捜査方針変更。愛香には近づくな。横井の殺害に関わったと思われる、『出来損ない』を探す。」
「え、出来るんですかそんなこと。」
「シナリオはどう進む?」
「あーはい。横井治の死体は船が直り次第、警察に提出しなければならないため、夏場ですが家の風通しの良い部屋に、そのまま保存されます。葬式は犯人の捜索が先決と、保留されます。島民たちは横井治の遺体や葬式について、妙に無頓着です。それよりは犯人の捜索のことばかりを優先します。」
「なるほど。犯人探しに吉本も合流する。」
「いいですけど、島民は渋りますよ?」
「余所者に身内の恥部を晒すようなもんか・・・。」
ふむ、と伊月が顎に手をやって腕を組む。そして、違うな、と呟く。
「『出来損ない』が白江だという可能性が残っている。月人はそのメッセージを託された。横井は吉本たちを白江に会わせる気、若しくはその存在を教えたい。そんなところかな。」
「伊月さんまでー。」
「理恵子の様子はどないや。」
「『若い人がまた少なくなった』と嘆いているのだよ。老人ばかりに囲まれた生活で愛香が不憫だと。『しかし先祖代々が暮らしてきた島を簡単に離れるのも嫌なのだよ。』と吉本に泣きついたのだよ。」
「ワシかい!?」
「ああ、よくお話してらっしゃいましたし?」
「キョリ!!月ちゃん距離いいい!!!」
「『お兄ちゃん遊ぼう!』と愛香は月人さんに声を掛けてきます。」
「いやああ!ごめん!!愛香ぶっちゃけ怖い俺!!!」
「さっきもKPが言ったが、やっぱ島民まともじゃねーな。あんだけ懐いてた横井が死んでも簡単に手のひらを返す松坂母娘・・・。いざとなったら雨宮一人で帰るわ。」
「花宮さん!!」
「まこっちゃん!!」
目の前でリアルにごりごりと削れていくSAN値と絆の崩壊に高尾はほくそ笑む。これぞTRPGの醍醐味。趣味が悪いのだよ、と緑間に小突かれるまで、にまにまと高尾は笑いが止まらなかった。
「じゃ、シナリオは次のパートに移行しますよ。紙とペン貸してください。」
「えーと、その前に珈琲紅茶お代わり要るひと・・・。」
ほいよと今吉が広告の裏白とペンを貸してやれば、そこには島の簡易地図が描かれる。番号が振られて誰の家、と綴る脇に紅茶を貰って礼を述べる。その地図を頭に叩き込みながら、各々珈琲やら紅茶を受け取り、くちびるを湿す。
「さて、今後の課題はなんや?」
「横井殺害の犯人、はまあ置いておいて、『出来損ない』の存在。あとは白江の物と思われる本の真偽ですね。本当に白江の物であるなら、『出来損ない』が白江である可能性が成立します。」
「ほなら、本の持ち主やと言われた大佐原宅への訪問は必須か。」
「『出来損ない』は森に棲んでんだろ?だったら山狩りも要るよな。」
「何故『出来損ない』は『出来損ない』なのか、はどうします?」
「そっちはシナリオをどう進めるか、やな。横井殺害事件を解決させて終わるか、白江の件まで踏み込むか。」
「白江の件。」
「やって、クトゥルフやし。島民は何か訳わからん存在やろ?白江がなんで行方不明になったか、横井はなんで死ななあかんかったか。後はそうやな、探索しとってなんぞ妙なもん見つからんと、ええね?」
わぁお、と伊月の微妙な感嘆に、室内の気温がまた落ちた。


続く。

***

更に続きです。鉛筆ダイス縦に真っ二つ。最近の子はわかるだろうか。一回試してみてくださいwww @→novel/1837640 A→novel/1846162


2013年01月01日 23:17初出。

20130118masai