今宵繊月の下で。











 
黒い学生服には水色のラインがあって、昨年まで伊月もそれを着ていたのだが、それには赤い模様は無かった気がする。

「青のスカイライン。○○区のは207の33-31。」
「スカイラインとな?」
「はい、目の前で。」

ぽむ、っと盛り土を叩いて、線香も蝋燭も持っていない伊月は、高尾から先程貰ったというか奪った煙草を置いた。ぐちゃぐちゃに潰れた猫の体は、黒子が制服が汚れるのも厭わず、大事に大事に抱えてきて、公園の隅に埋められた。

「見かけたら連絡下さい。」
「ん。気が向いたらねー。」
「伊月先輩。」
「なぁに?」

手作りのお墓の前に、ちょこんと二人で、黒子は膝を地面に下ろして手を合わせて、伊月は膝を広げてしゃがみ込んで煙草に火をつけているという違いはあれど、墓を眺めおろしてどこかぼんやりとしている。

「大学は通わないんですか。」
「学費が無い。」

あっはっは、なんて笑って寄越した先輩に、それでは失礼します、と頭を下げた黒子に、またな、と手を振って。

「・・・こんなところでウロウロしてたら恰好の餌食だろうよ。」

見送ってごちる。
近くにあったブランコの柵に腰掛けて見やると、やはり伊月には面識の無い柄の悪い男が寄って集った。そもそも伊月を知る人間は伊月の知人には下手な手出しをしない。黒子を人気の少ない木陰に連れ込もうとして、あ、と声が上がった。

「てめっ、なにす・・・!?」
「すいません。」

ぐちゃり、とローファーに潰されたのは、ヒトの耳だった。黒子の手の中に鈍い光を放ちながら翻ったブロンド色のバタフライナイフに男達は一歩引き、やばい、と顔を青くした。耳を無くした男は出血に驚いて逃げ出した。

「お金はありません。通して下さい。それから・・・。」

黒子の視線は足元に降りた。野良猫が一匹住み着いており、子供を産んだが早産だったようで、次々と墓は増え、今はまだ足の立っていない子猫を一匹抱えている母猫が毛を逆立てている。

「駄目です。動物を虐めては。」

てのひらから落とされる刃物は、男の足を貫いて、聞き苦しい悲鳴を伊月の耳にまで有り難くないこと、聞き届けさせてくれた。

「そんくらいにしとけ、黒子。」

ナイフを引き抜きに現れたのは、バスケ目当てに遊びにきていた火神で、刺さっていたものが引き抜かれる痛みに男は洟水を飛ばして泣いた。

「あれ、伊月サン。」
「どーも、火神。アメリカ行くってまじ?黒子の面倒は俺は見れんよ。」
「お、透明少年。」
「テっちゃんじゃん、バスケ混じらね?」

笠松と高尾の声に黒子は振り返って頭を下げる。

「赤司君も。」
「うおい!?なんでお前は背後を取りたがるのまじでちょっと!」

黒子の視線に振り返ると、丁度その手は伊月の頬を舐めらかに滑った。ぞ、と立った鳥肌はヒトとしての反射だろう。

「行き詰まってるね。」

知ったように赤司が口を開くので、はあ、と黒子は言うでもなし。

「実は進学希望先は緑間君と同じで。」
「あー、テっちゃんは真ちゃん苦手だもんねー。」
「真太郎もテツヤも似てる。」
「何が?ああ、気を許した仲間にしか笑顔見せないトコとかストイックなベクトルとか?それこそ同族嫌悪が似てるんじゃないの?」
「ヒントはツンデレ?」
「和成正解。」
「言葉をサボるな。」

まったく、と耳だった塊を伊月は草陰に蹴り飛ばした。朽ちるか猫の餌にでもなってくれるだろう。

「バスケはパス。雨が近いと傷が痛い。」
「あ、ナルホド。台風近いっすもんね。」

伊月の咥える煙草は、呼吸にヂチと歪に鳴った。中にクスリを仕込んでいるわけだ。

「青のスカイライン。○○区のは207の33-31?何で。」
「猫を轢き逃げたって黒子がおカンムリだ。ま、協力してやって。」
「おーい!バスケの順番空いたぞってよ!」
「あ、健介。」
「よ、伊月も・・・無理か。赤司も睨むなよ。今日はタツヤいるし人数はなんとかなるって。」

そうやって彼等はストバスコートへ向かい、その場には伊月とその腕に絡み付いている赤司と黒子が残った。

「他の皆は?」
「僕も、ここへ来たら伊月先輩に会えるくらいしか。」
「そ。二号は元気?」
「大きくなりました。」
「誠凛の守り犬様だから大事にしなきゃなー。」
「はい。」
「・・・ピアス開けたんだ?」
「皆で決めました。」

皆で、とは誰を指すのだろう。基本的に品行方正を地で行く黒子は今はクリアのシリコンで誤魔化しているが、近くで見るとちゃんと綺麗に穴が空いている。
そんな伊月は赤司のルビーが綺麗だと、思っている間に用意されて今では何の因果かイーグルアイなんて石が黒髪の狭間、右耳に輝いている。

「それじゃあ、行きますね。予備校の時間です。」
「うん、頑張れ。」
「伊月先輩も、無理をしないようにして下さいね。」

そしてまた、丁寧に頭を下げて黒子は去った。

「俊さん。」
「うん、黒子は大丈夫だろ。」
「ならいい。」
「いや、俺よかお前のが知ってんだろ、赤司。」

こつんと秀でた額を指先で弾いてやったら、唇に噛み付かれた。

「今夜は誰と寝るの?」
「さぁ?どっちにしろ最後には俺が赤司の処に帰って来るよ。」

隙を見て抜け出した腕を恨めしそうに睨んだ赤司は、タンクトップの上に羽織った黒いジャケットの裾を引く。

「いつになったら買わせてくれる?」
「お前には絶対売らない。」

***

車窓から濁流のように視界を嬲るネオンに伊月は瞬いて、握り込まれた右手に意識をやった。
思っていたより年のいった男で、身なりからして、肩書きはあるだろうが、それ以上でも以下でもない男だった。

「綺麗だね。」
「よく言われます。」

するりと解いてその手で股間を撫ぜてやれば、はあ、と恍惚に男は唸った。

「名前は?また会いたい。」
「冗談でもやめて下さいよ。体の相性で決めませんか?」

うっとりと囁けば、そうだな、と苦笑が帰ってくる。
ホテル街を通り抜け、地下駐車場に滑り込むと、駐車券を取る際に部屋を選んでそのまま、リフトに手を引かれた。

「先にシャワー頂いていいですか。」
「いいよ。」

脱衣場で服を脱ぎながら伊月の感想は、慣れてるな、だった。貴重品の類は車に置いて鍵も落とし、鍵は部屋の金庫に入れた。駐車場を出る際に部屋料金も払う設備をきちんと整えている。シンプルな指輪が後部座席の隅に転がっていたのは伊月でなければ見落としただろう。ひょっとしたら高尾は見つけたかも知れないが、この辺は経験値がものをいう。
シャワーを浴びながらその辺まで考えて、背後の気配に振り返る。

「えーっと。」
「風呂場は透けて見えるんだ。」
「あ、マジックミラー?」

自らを隠すように抱いた腕を男は丁寧に剥がしてやって。

「自分で解すつもりだった?初心な顔をして。」
「だって、いきなり突っ込まれたら痛いじゃん。」
「そう、そっちの喋りのほうが好きだな、僕は。」
「そう?じゃあ甘えちゃお。」
「おいで。」

くすくすと笑った痩身を男は抱き寄せ、ローションを纏わせ、白い肌をくまなく撫ぜる。
あ、と零れた音は素直に男を刺激して、くるりと襞を弄っていた指先は開陰部を撫ぜて、つぷりとやわらかくうねったそこに入り込んだ。

「ん、っむ。」
「声、聞かせて?」

くちびるを噛んだ伊月の頬を、下肢を嬲り続けるそれとは対象的な優しさで撫ぜて、笑った。

「だって、ぁっ、お風呂場、ひびく、う、んあ!」

増えた指先はきゅっと前立腺を摘まんで、とろりと足元に白濁が落ちた。

「いっちゃった?」
「ま、動かさないで、やあ、また、いっちゃぁ・・・っ!」

黒い艶やかな髪から水滴が飛び散って、男の肩に縋って啼く姿は壮絶な色香を放つ。根元を掴まれ首を横に振った伊月は男の意図を掴んで、膝を落とした。頬に擦り付けられる苦いペニスに眉を寄せたが、口を開けて咥えた。

「ふっ・・・。」
「苦しかったら言ってって、言おうと、思った、けどっ!」

髪を掴まれ、ぐ、っと喉の奥まで来る衝撃に伊月は咳き込んで一度口を放した。

「驚いたな。最高だ。」

指先で歯を押し上げて、好き放題に上顎に亀頭がぬめるのを舌で扱いてやれば、呻いた男は頭を放してその顔に精液を吐き出した。

「いっぱい出た。溜まってたかな。」
「・・・ん、く・・・ふ。」

熱い液体が顔に粘ついて、赤い舌は口内のそれを見せつけるようにいたずらっぽく笑い、とろりと白い肌に撫で付けた。
つめたいタイルにぺたりと座り込んだ伊月の髪と顔に湯をかけてやって流し、抱き寄せてベッドに誘う。

「カラダやわらかいね。」
「あ、ストレッチやってるから。」
「へえ?」
「中学からずっと。その癖が抜けないの。」

くすくすと、視線と会話を交わしながら舌先で潰された乳首に伊月の体はぴくりと振れて、後孔に伸ばされた指を飲み込んで行く。ローションが足され、膝が徐々に開かれる。

「あ、そこいや。・・・あん!」

ぐずぐずと中を解されて、臍に舌を突っ込まれると細い身体は大きく撓んだ。コンドームの封を切る音に、指を伸ばしてつるりとゴムを伸ばすのを手伝ってやれば、男は満足そうに笑った。その頭を引き寄せて茎を舐めさせる合間にまた指を増やす。

「ふぅ、あ・・・。」
「入れても?」
「んっ。」

指を抜かれる感触が背筋を噛む。寸前にきゅっとすぼまった入り口に、仕方のない子だ、なんて笑われたが、言い返す暇もなく体勢を入れ替えられる。安いシーツに転がされ、充てがわれる性器に反射的に身体は強張るが、深呼吸にあえやかな声音が零れて行った。

「ん、あ、おっき・・・。」
「たまらないね?」
「やっ、いっちゃ、う、ぁ!」

撫ぜられたそれに、こぷりとちいさく吐き出して、奥がきゅんと蠢いたのを狙って脚が掲げられて入る分全てが入れられた。陰毛を会陰を擽る感触に、気が飛びそうになる。

「どうしたい?」
「まって・・・ぇ。」
「痛い?」
「す、こし。でも、きもちい・・・っはん。」

きゅっきゅと内壁が女のように絡むから、男は少なからず戸惑った。

「ね、俺みたいないんらん、けーべつ、した?」

くふりと蠱惑的に笑った、男からすれば少年と呼んでいいような青年に、いいように動かされている。奥を叩けば必死に腕伸ばして懇願する様子が可愛らしくて、浅いところを擦ってやれば気持ちがいいくせに嫌がるものだから嗜虐心に刺激が来る。

「っは!」
「おく、きてっ・・・ぇ!」

薄い皮膜越しに広がる熱に身体中が汗を吹き、黒曜石のようだった瞳はすっかり蕩けて水面に浮かび、赤い舌が金魚の尾鰭のようで旨そうだった。

「んっ、ん、うー!」

思わず交わしたキスに、すらりとした脚が腰に絡んで、孕む子宮もないのに奥に思いっきり叩きつけていた。びくん、と水揚げされた若魚のように、みずみずしい肌が弾ければ、暫くの強い締め付けに男は唸った。
くたりと腕がベッドに落ちて、閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がる。

「しんじらんな・・・きもちよか・・・った。」

赤いくちびるから掠れた声さえ濃い色香を孕むから、もう何度目か、キスして抱き締めた。数年来の恋が叶った少年はこんなこころをしているのかも知れないとまで、男は思った。

「ね、最後にするから、上乗っていい?」

胸板に擦り寄ってそう囁いた伊月の声に男は逆らえなかった。
上に乗る、という体位は勿論、無意識のうちに、最後、という言葉にもだ。
跨いだ際に開かれた脚の間のそこからはほぼ透明な液体ばかりが吐き出されており、栓の無い後ろからはとろとろと愛液のようにローションが落ちる。花色の白い肌はぬらぬらと揺れている。後ろから角度を定めて徐々に腰を下ろして行く格好は、妖艶とでも評すのだろう、男の頭が正常ならば。

「ああ、綺麗だ。」
「き、もちい、い?ね、おれのからだ、きもちい?」
「気持ちがいいよ。」

ほわっと花がほころぶように笑った伊月はそのまま腰を揺らし、焦らし、締め付けた。

「ぅあっ、あっ、はん!も、だめぇ・・・。」

くしゃりと前髪を指に絡めてほろほろと快楽から涙を落としながら、男の腹に手を置いて嬌声を漏らす姿は女と遜色無い。下から突き上げれば喉を晒して甘く叫んで果てた。

「いやっ、おれ、まだいってるのぉ!」

最後に生殺しを食らわされた男はそのまま伊月を押し倒して、つめたいローションに彼は身を引きつらせたが、ぐちゃくちゃと犯される感触に、後ろからの刺激だけで快楽の奈落へ突き落とされた。

「いつでも、電話しておいで?また会おう?」

延滞料金は自分が持つと言い張った男は、伊月にもありったけの紙幣をプレゼントして、一度車に戻って名刺を持ってきて、何度も何度も伊月の美しい黒髪を梳きながら、水を含ませてやりながら、睦言に勤しんだ。

「いいの?今度はお金の関係ないところで会いたい。」
「可愛いな。」

そうして、時刻を確認すると、料金は払っておくからね、と部屋を出て行った。
伊月は暫く耳を澄ます。案外こういうところの扉は薄い。壁は厚く造られているから、肝心な時の音漏れは少ないと思いきや、実はそうでもない。廊下を通して結構きこえちゃうので用心に越したことはない。
甘ったるい女の子の声やドスの効いた雄叫びが聞こえることもあるので人間観察に飽きると利用してもいいだろう。

「っの絶倫・・・ッ!!」

さっきまでの媚態と可愛げはどこに捨てたか、シーツに包まり、あの演技はねーわ俺ーなんて反省会まがいを始めている。まあ、所謂通常運転というやつだ。
男同士だからといって避妊具をサボる輩は実は結構多い。本来の役割はこっちが重きだと聞いたことのある伊月は首を傾げる。今回の客は煽った七回とも全部コンドームをしてくれたので有り難い。延長時間終了のコールまでゆっくり眠れる。カーテンの向こうもいい加減赤い。
この時間の空を伊月は好きで、苦手だった。特にこんな場所から枕元に紙幣を置かれて見るこの空は、赤司の瞳の色にそっくりなのだ。

「あ、電話しとかなきゃ。」

ころんと窓に背を向け、ぎしぎしと軋む体を起こして、外線ボタンを押す。

「あ、どーもアバタさん。今から言う番号のケータイに、俺の代理つって伝言お願い出来ます?あー、そうだな、今度見学だけ行きます。見学だけ。はい、じゃあ伝言要件からまず、青のスカイライン○○区のは207の33-31。持ち主判明。株式会社△△の広報部部長ーーー

***

《今朝、青いスカイラインが□□港にて引き上げられました。ナンバーは○○区のは207の33-31。運転手一名が死亡、遺体の一部損傷が激しく、至急身元の確認を急いでいます。次のニュースです。・・・》

「あら、□□港ってそんなに遠くないですね。」
「いってきます、母さんも運転の際は気をつけて下さいね。」
「はい、今日も頑張っていらっしゃい、テツヤさん。夕べは眠れました?隈が出来ていますよ?」
「少し夜更かしをしてしまいましたが心配ありません。いってきます。」
「ええ、勉強もほどほどになさってね。行ってらっしゃい。」

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NO犯罪!YES萌え!!第五弾。はい、モブ月で指定入ってるんで気をつけてご覧ください。そしてご覧くださいこれが暴走結果です!!wといわけで赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ赤月増えろ下さい!!!我が家の俊ちゃんは瓦に塗るあれやそれやの配分を私に相談しに来ました。分野がwwwwちげぇよwwwwww陶芸と瓦作りは似て非なるものだwwww■ふおあああああタグありがとうございます!!名指しで萌え報告いただけますとこう、きゅんっていうかぎゅんっていうかぎゃんっていうかもう凄い嬉しいですめっけて即刻ロックかけさせて頂きましたぎゃあああありがとうございます!!(9/19

2012年09月18日 21:40初出。

今のところ一番のお気に入り話です。どうしても黒子っちは特別扱いしちゃうw

20121114masai