今宵更待月の下で。











ネットカフェの深夜は静かだ。
客は入っているが、寝ているか静かに映画でも観てるか、ネットサーフィンでもしているか、まあそんな感じなので。

「赤司。」

コツン、とブースの扉を叩かれ、45と割り振られたその扉は馴染みの店長の手によって、伊月専用のブースになっている。

「おかえり、俊さん。」
「ただいま。シャワー借りた?」
「ん。」
「また株頃がして遊んでんの?お前もう実家の株主じゃん。あ、そこ右下売っとけ。取締が立ちんぼナンパして遊んでるトコなんて禄じゃねーわ。」
「売ったの?」
「うん。ついさっき。名刺確認したから間違いないかなー。」
「潰れないかな。」
「願望零れてる零れてる。俺はシャワー行くな。あとちょっと寝るわ。」
「僕も行く。」

株取引の画面を放ったらかしに、ぎゅうっと腕にしがみ付いた赤司に、じゃあお願いしようかな、と伊月は微笑んだ。赤司しか知らない、子供染みた、でも優しい、そんな微笑で。

「っは。」
「痛い?」
「ちょっと、ね。」

真っ白な肌に赤い手形を見つけて赤司は眉を顰め、伊月に撫ぜられる。

「ぁん。」

鎖骨を舐める舌先に、尖った乳首を押し潰されて殺した嬌声が上がる。口に手の甲を押し付けて喘ぐ伊月の体に傷が無いのをしっかりと確かめて、黒髪に指を差し込み、くちびるを自分のそれで塞いだ。

「ん、く。」
「っは、俊さん。俊さん。」
「あっ、あか・・・っせいじゅうろう・・・。」

ひゅっと一瞬息を詰め、舌を絡めて吸い上げればぎゅっと伊月は赤司の背中に縋り付いた。

「勃った?抜く?」
「お前も、脱げよ。」

渡されたコンドームに嘆息し、赤司はワイシャツを脱ぎ捨てスラックスの前を寛げた。

「中、大丈夫?」
「お前が確かめ、てっ。」

名残でまだ柔らかい孔に指を沈めると、きりきりと爪が背中に刺さる。中はとろとろと女のように濡れていた。

「処理甘い。風引くよ、俊さん。」
「んっ、ぅ、・・・ふぁ。」
「そのまましがみ付いてて。壁冷たい?大丈夫?」

傷跡が赤く走る膝を持ち上げ、壁に押し付ければ痩身は戦慄き、荒い呼吸ばかりを床に零した。ジェルが塗られたゴムで襞を割れば、甘い吐息が肩に埋まった。

「しんどい?」
「普段も、こんくら、い・・・っは。喋れ・・・んぅ・・・。」

黙れとばかりにくちびるに噛み付いて、上顎を擽ればきゅんと中が蠢いた。こんな体でも女も相手出来るのだから、それは器用とかそんな次元だろうか、なんて赤司は考え、それを振り切るように、ずん、と音がしそうな勢いで貫く。衝撃で、伊月の性器は透明な雫を垂らした。

「あっ、う・・・ぁ、深ぁ・・・っは、あ。」
「俊さん気持ちいい?」
「んっ。」

単純な浅いピストンを繰り返し、ぱちっと赤司は瞬いた。

「くち、ふさいで?」
「ん・・・?」
「誰か来る。」
「んむっ!」

淫蕩に反響する喘ぎ声は赤司の口に飲まれたが、ねちゃくちゃとジェルを擦る音は肌を擦る音は止まろうとしない。

「ゃ、めっ。あ!」

こりっと擦られた内部に伊月は跳ねた。首を横に振って、目の前にあった肩にくちびるを寄せた。流石に足音が聞こえる距離になって、ぎゅうっと強張らせた背を赤司は撫ぜたが嬲る腰は止めないし、ペニスを扱く手も止めてやらない。それとは相反するように優しく髪を撫ぜて、頬にキスをして、噛まれた肩に眉を寄せると引き剥がしてくちびるをまた塞いで歯列をなぞり、求めてくる舌先を絡め取る。ちゅるりと唾液の遣り取りが意外と響き、涙の浮かぶ切れ長の目元から落ちる涙を舐め拭った。
隣のブースから水が流れる音が聞こえ、くちびるを開放すれば、安堵の息が零れた。

「っあん!?」

ゴツ、と奥を突かれて上がった嬌声に、伊月は喉を仰け反らせて口に手の甲を当てる。

「噛むの、だめ。」
「ぁ、んぅ、んっ、く・・・うん!んっ、く、は、むり、ぇじゅろ、だめ、だめ、まって、となり・・・っん!んーー!」

嬲られ続けた性感と、隣人の羞恥に爪を立てる伊月は床に降ろされている脚まで痙攣させて腹を白く汚した。
シャワーの音は未だ止まない。隣のシャワーブースには他人がいる。

「せ、じゅ、ろぉ・・・!」

自ら腰を揺すって飲み込んだ愛人の情を受け止めようとする姿は艶めかしく、実に淫蕩だ。その色香を黒髪に鼻先を埋めて鼻腔に満たし、赤司は一層深くに突き入れる。

「ん、ー気持ち好い。」
「俺で、いって?」
「俊さん、好き。愛してる。」

安っぽい言葉を伊月は嫌う。それでもこれ以上を今の状態で考え付くほど赤司だって冷静じゃない。乱れ切った花色の肌に、くまなくくちづけを降らし、蕩けた貌が壮絶にうつくしい愛人の顔を引き寄せる、また深い口吻けを交わした。内部に熱が弾ける感触に、甘い呼吸を漏らした伊月の腹部をそっと撫ぜるとゆっくり引き抜こうとして、きゅんと入り口に首が引っかかる。

「・・・ぁ、もうちょっと、こうして、たい。」

縋る様に腕を回してくる伊月の体温は、また直ぐに考えられない程冷えるのだろう、シャワーヘッドを赤司は取り、温度を確かめると汗みずくの背中に掛けてやる。赤司も蹴るようにスラックスを脱ぎ落とし、二人で手のひらに泡立てお互いになすり付ける。隣のシャワーブースからはまだ水が降っていて、閉じ込められた二人は仄かに笑う。ぬかるむ後孔を丁寧に洗ってやれば、よく懐いた猫は赤司の耳を軽く食んだ。

「俊さん、立てる?」
「ギリで。」
「おんぶする?」
「やだよ恥ずかしい。」
「努や泰介にはさせるのに。」

膨れた頬を伊月は突ついてやって、ちゅ、っと可愛らしく唇を奪ってやれば、忽ち機嫌は元通り。シャツを羽織り掛ける肩甲骨に走る幾重の爪痕に、今更ながら伊月は真っ赤になった。これはきっと独占欲みたいなものなんだろう、肩に残った歯型も、赤司は嬉しそうに撫でるから、伊月は彼の愛人でいたいのだ。恋人ではない。恋をするには近すぎる。恋を告げるには遅すぎる。情を交わして愛に昇華させ、その熱湯の中に揺蕩う今が、きっと倖せと呼ばれるもので。
隣のシャワーブースからひとが消えた気配に二人はシャワーブースを出て、充てがわれたカフェのブースへ。隣からは鼾が聞こえ、思わず顔を見合わせた。

「煙草いい?」
「うん。」

赤司はスリープモードになっていたパソコンを叩き起こし、株価指数をチェックした後、呟きに入る。同輩や先輩後輩の呟きは夜になって一旦静かになっており、DMで接触してきた相手に適当な返事を返す。くろちゃんねるでは情報収集に務め、時折安価作業に参加。背後にとんと灰を灰皿に処分する音を聞きながら、折を見て振り返る。もそもそとブランケットを引き摺り出して、しなやかな腕が赤司の腰を巻く。

「おやすみ、征十郎。」
「おやすみ、俊さん。」

見下ろせば甘えるように抱き付いて、猫のように丸くなって静かに眠る伊月がいて、ふむと一瞬悩んだが、黒髪を優しく梳けばんぅと喉を鳴らし、起きない程度に頬と口の端に唇を押し付けた。
このまま寝てしまおうと思ったら、マナーモードのスマートフォンがメールの着信を告げる。アドレス帳に入っているのは大手企業の重役だっやり社長だったり、はたまたバスケ仲間という風呂敷の広げっぷり。

『チェックしといたほうがいいかも』

というサブジェクトで氷室から送られてきたURLは、大型動画サイトのR指定ジャンルで、ヘッドフォンから再生された声に赤司は溜息を吐いた。データをコピーしてUSBに落とし、動画はハッキング顔負けに即刻削除。投稿されてから僅か三時間で四桁再生を叩き出したその男性同士の性交渉のシーンは、随分周到に立ち回ったらしい、伊月の顔は一切写っていなかった。

数日後、特定された男は繁華街のゴミ捨て場で半死半生の姿で発見された。ついでに会社も潰れた。
一人で生きる事の出来きない黒猫は、今日も独りで気ままに公園や繁華街で遊んでいる。

ねえ俊さん、愛してる。

***

NO犯罪!YES萌え!!今回は待望の赤月で指定です。この二人が兄弟みたいで親子みたいででも恋人っていうにはしっくり来ない。つまりはそういうことかと。そして私は更新ペースを見直せ。

2012年09月29日 00:46初出。

ついにセルフツッコミがw

20121115masai