今宵朔月の下で。












 
いつもの公園のベンチに屯ろするのは年の頃は高校生、下手をすれば中学生も混じっているだろう、違法ドラッグの液体が塗り込められた紙を舌の上で転がし溶かしながら煙草を咥えた彼の周囲に、彼女達は伊月さぁん、と気軽に声を掛けて合流した。

「おっすー?元気そうじゃん。」
「これあげるー。」

それは一見なんの変哲もない黄緑色の箱だが、見る者が見れば即座に解る、封を切ったばかりのコンドームの箱だった。

「おいー。」

その少女はけらけらと笑っているが、伊月は盛大に顔を顰め、からり、手の中に転がし、ぽむっとその幼い茶髪を撫ぜた。

「あ、伊月さぁ、こないだおっさんとらーま行ったっしょー。」
「げ。見ても言うなよそういうこと。」
「だから斡旋しよっかってゆってんのに。」
「ちょ、ユウが斡旋組んでんのってオトコばっかじゃん。やだよ。」
「たまにいるよ、おんなのひと。」
「ゲイでしょそれ。」
「あっはー!ばれた!女の子目当てにオンナが登録するって訳わかんない。レズだよねー。」
「まあ、斡旋はユウが選別して登録して常連管理してっから便利ではあるよね、がばがばとか言うオトコいないし。」
「なにそれ最悪!そっちだってイかしてくんないくせにさー!」
「その辺、伊月はいいよねー。がばがばとか言われた事無いでしょ。」
「いやいや待て待て。同じ土俵に上げるなー。」
「あ、がばがばって男の場合どうなのかな?」
「早漏とか遅漏とかじゃない?」
「うん、どっちもやだ。」
「え、早漏って楽じゃない?ミツタのオヤジそうだよー。で、お金もいっぱいくれるしー!」
「ああ、確かに早漏は楽かも。」
「伊月さん、わっかるーぅ!」
「遅漏に付き合って途中でローション乾いたりしてね。」
「うわ生々しい。」
「ゲイ登録しよっかな、もち伊月さん向けに。」
「いらんわ。」
「だって立ちんぼめんどっちくない?」
「たまにはオンナも抱きたいわ!」
「お金くれるならやらせてあげてもいいけどー。」
「でしょ。俺は君ら側なのー。」

まあこれは有り難く使わせて貰うかね、なんてジーンズの後ろポケットに突っ込んで、何故か売春が生業の少女等の会話に違和感無く混じっている伊月の首をするりと巻いたのは赤司の腕だ。

「あ、セイくんだー!」
「俊さんに何を吹き込んでるの殺すよ。」
「ぶっそー!」

きゃはは、と彼女らは赤司の手にある裁ち鋏にもそのオッドアイにも怯まずに笑い転げて剰え、いいものあげたから二人で使いなよー、なんて。
真昼間の公共の場所で交わされる会話とは思えないが、これが彼女らとそれに巻き込まれた伊月の通常運転だ。む、っと眉を顰めた赤司には、夜までのお楽しみじゃない、なんて平然と言い放つ。

「そういえばフミだけどさぁー。」
「え、フミなんかあったの?」
「トシ誤魔化してAVのオーディション受けまくってるらしーよ。」
「え、何それやばくない?」

流石に伊月の咎めるような声音に、ユウと呼ばれている少女は斡旋のメールを回すために携帯電話から視線を上げないで。

「まあ、やばいっちゃやばいんだけどさー。」

言いながら、それでもくすくすと嗤うだけなのだ。

「てゆか伊月ぃ、やんない?アタシとー。」
「エスくれるんならいいけど。」
「俊さん?」

ついっと鋏の鋒が喉仏をなぞっていくのが冷たくて気持ち良くて、ほうっと零れた吐息にぐいと艶やかな黒髪を引かれて仰け反ったところを唇で唇を塞がれる。

「僕よりクスリ?」
「さあ?赤司はなんて答えてほしい?」

つるりと途切れた唾液を唇に乗せたまま、逆さまに覗き込む赤司に対し、悪辣に嗤った伊月は嫦娥にしては些か質が悪すぎる。

「出たよナチュラルホモ。」
「てゆか真性ホモ。」
「人聞きの悪い。両刃使いと言いなさい。」
「その割には伊月はセイちゃんにベタ惚れじゃんか。セイちゃんもここ外だよー!」
「セイくんの生活費のためにウリしてんじゃん。」
「赤司くんって座ってるだけで稼げるのにー!ズルいー!」
「・・・顔面偏差値。」
「こら。」

稼ぎはそれぞれ使い道があんの、なんて肩を竦めた伊月の背後から赤司は離れる素振りは見せず、ベンチの背凭れを越えてぎゅうっと抱き付いた姿はコアラのようで少し笑えた。

「で、そうだよフミだって!あのこおっぱいだけじゃん!誰がAVに使うかっての!」
「ん?いーちゃんってフミ嫌いー・・・だったね。」
「何でも自分の思い通りになってトーゼンって顔すんじゃんかー嫌い!」
「いっちゃん処女だっけ。」
「男のいる所でする話題じゃねーよ?」
「大丈夫、伊月も赤司もオトコにカウントしてないから。」
「えっヒドイ。」
「日向さんとか高尾くんは別だけど。」
「わー、ひゅーが喜べ。」
「順平と和成滅びろ。」
「ちょ、赤司。」
「だってあの二人明らか伊月狙いじゃん?」

赤司の滅びろ発言に少女たちはまた、箸が転がっても笑えるのだろう、二人を中心にけらけらと笑って、確かにあの二人はねー、あとタツヤもじゃない?なんて好き放題だ。木吉サンもあやしーよねーあと福ちゃんとかリョータは絶対伊月目当て!といつの間にやら伊月の周辺をゲイだらけにしてかかっている。

「だって福ちゃんあれだよー。カオリがコクったの蹴ったじゃん。」
「健介はモテるよな。」
「木吉サンってなに考えてるかわかんないよね。」
「え、木吉ってカノジョいなかった?」
「うそー!?」
「あれ?俺の思い違い?ひゅーがに確認しとこ。」
「すーちゃんがリョータにタトゥいれたんだけど、もう話してる内容全部伊月絡みだったって愚痴ってた。」
「あっはっは!何それ笑えない!」
「・・・笑ってるし。」
「なあ、エミ元気?」

ふと、ここにはいない少女の名前を伊月は挙手で呼んで見た。

「なんで?エミだったら族入りでもしてんじゃない?」
「あ、そっか。」

その少女は高校時代に暴行被害を受けて、随分と暴力的になった少々複雑な経緯がある。知り合いの暴走族の頭に紹介したのは伊月だった筈だと赤司は思い出した。
伊月はスリムタイプのフィルターを噛み、ふむと一度唸った。

「心配?」
「ん。ちょっとねー。」

ぽむと赤い髪を梳いて、うん、と頷いた。

「ユウ、エミに連絡取れる?」
「取れるよー?何?今夜のおねだり候補ー?」
「違うっつの。フミが年齢詐称でAV出たらまじーから、そんなにAV出たいなら業者紹介してやる、つって。で、そのマネジメントつか。」
「俊さん。」
「はいはい、どうした赤司。エミにフミのボディガードさしてーって考えた訳よ。」
「俊さん。」
「お人好しって言いたいんだろ。自覚あるよ。」

ちゅ、っとすべらかな頬にノイズをプレゼントすれば、ころころと肩に擦り寄る赤司の頭を撫ぜながら。

「あっちには俺が話通すからさ、ちょぉエミとフミに打診してやってよ。まああの二人は相性最悪だと思うけどある意味最高だと思うから。」
「思うからって・・・。」

憮然とユウは顔を上げ、ね、と伊月が艶然と微笑んだ様子に肩を竦め、その旨のメール作成し、内容を伊月に確認させるとそのままsendボタンを押した。
即座に着信があった。

「げぇー。」
「貸して。」

エミからの着信にユウはあからさまに顔を歪め、伊月の声に放るように携帯電話を渡した。

「もしもしー?久しぶりー。タカヤいる?コウスケでもいい。おっけ。・・・おお、コウスケ久し振りー。うん、エミちゃんこっち頂戴。ちょっと頼みたいこと出来た。えーそう言わないでよー。こっちだって考えがあんだって。・・・ふうん?赤司、タジマんとこってどう?」
「アズサで勝てる。」
「あんがと。アズサぶつけたらいいってさ。いいじゃん鼻っ柱折って来いよ。応援するし。ん?あー、あー・・・まあいっか、赤司いたら負けないし。うん、二輪の免許ならこないだ取ったし。・・・お巡りがいないとこ調べとけよ。うん、ほんじゃエミは俺んとこで一回預かるわ。場所は指定するから代わって。おーまたなー。・・・もっしー?エミ?急にごめんなー。うん、稼げるのめっけた。まあ、お前次第だけど。二丁目の裏通りの石碑。あ、それそれ。奥にちっこい神社あるとこ。よく知ってんなー。そこで待ってて。フミって女の子と、なんつーかな、亜畑不動産って書かれた黒いバン来るから、待ってて。」

ぴ、っと通話を切断すると、ユウに携帯電話を渡して。

「で、フミには二丁目の裏通りの何か石碑あんじゃん、そこ。」
「メール?」
「うん。業者には俺が連絡入れるから、もっかいケータイ貸して。」
「めんどくさっ!伊月もケータイ持ってよ!」
「持ってるほうがめんどくさいし。」
「俊さん。」
「赤司まで言うかー?俺は束縛嫌いなんだってー。ん、ケータイあんがと。」

彼の脳はどうなっているのか、11桁を何も見ずに入力し、通話ボタンを押す。

「あ、どうもアバタさんー?伊月っす。え、やだなー俺が無修整ポルノ出るって発想がオカシイですって。あれっきりだって言ったっしょ。それにアバタさんちはクスリ厳禁っしょ?俺には無理だって。・・・ちょ、赤司苦しい・・・。あ、はい。高校生?でAV出たいっておっぱいでかい女の子がいんですけどー。あ、まじっすか。フミって高校生で間違いないよね?」
「うん、今一年。」
「高一でAVとか世も末だな。ああ、俺の友達みたいなもんです。二丁目の裏通りに石碑あんじゃないっすか、ちっこい神社あるとこ。そこで待たせてるんで、交渉次第でどうぞ。あ、ゴーカンは無しですよー。後味悪いし。友達だし。はい、そんじゃー。」

ぴ、っとまたもや、かるーい調子で一仕事やり切って、ほい、と携帯電話はユウの手に帰ってきた。

「うっわー伊月えげつなー。」
「紳士じゃね?」
「無修整ポルノってちょ!」

きゃははと途端に笑い出した彼女らに、伊月は煙草にやっと火をつけて。

「まあ、目元に線入るから。下手しなきゃ身バレも大丈夫だって。」
「やっばー!カッコいい伊月!抱いて!」
「未成年には興味はありません。」
「ちょ、伊月さんも未成年・・・!」
「俊さん・・・。」
「何だろうか、赤司。ちょっとずれて貰っていいか、首入ってる入ってる。」
「セイくんのだいしゅきホールド入りましたー!」

きゃー!なんて女の子は不思議な方向に黄色い歓声を上げているが。

「なんで無修整ポルノの制作会社の連絡先知ってんの?軟派されたの?出たの?あれっきりってどういうこと?」

伊月の事に関しては急に饒舌になる赤司に、さてなんて誤魔化そうかな、なんて若干顔を青くしながら考えている間に、味わう暇無く煙草は徐々に短くなっていく。

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NO犯罪!YES萌え!!なストリートチルドレンパロいくつ目?四つ目くらい?指定いれるほどでもないけど色々ヒドイ。途中から腐女子大量発生したwwwなんぞこれwwwサイトで連載してた別ジャンルの話と少しだけ繋がってます。読まなくても問題ないです多分。名前も変えてあるし。まあ、今宵シリーズは基本的に好き放題してるんで(どういうことなの。)ちょっと羽目を外しすぎた自覚はあります。ごめんなさい。赤月が愛しいの。今週号は一コマだったけど凄いご褒美があった!(仕事帰りに立ち読みしてきた。我が家の俊ちゃんはとある男前なゲームに夢中です。因みにこれ描いてる時はD/G/S無双でまたいろんな意味で泣きそうになりながら描いてました。このメモ帳ひっくり返すと絶対奴等が出てくるんだぜw別の話描いてたら違うのにw赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい赤月下さい!!赤月はパラレルじゃないと私描けないの!パラレルで若干性格弄らないと描けないんですよー赤司くんのキャラ掴めないの洛山vs秀徳は高尾くんが魅力的過ぎて!!所でこのシリーズって第一話以外反応も聞かずにほぼ自己満足で描いてるんですけどこのまま暴走続けちゃってもいいんですかー!?■わお!タグ弄りありがとうございます!!心置き無く暴走しますあざっす!!成る程無害のおクスリめっちゃ納得しちゃいました!問題は腐的心の副作用っていうwww!(9/16

2012年09月15日 21:30初出。

キャプションすげーw

20121114masai