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「おたんじょうび、ないしょでおいわいするから、しゅんにいはきょうはおやすみなの。」
伊月俊は流石にその言葉で事情を悟らぬほど、愚鈍では無かった。 今吉探偵と伊月助手へ鬼さんこちらと。 笑い過ぎです、と棘の生えた声音で告げられた今吉翔一は、やっぱり笑いが止まらなかった。 「観菊会に関しても色々あるんですよぅ・・・。」 「あー、体調芳し無い、ゆうのは聞いてあるわ。」 よくあの体調で観戦して下すったなぁ、というのも伊月にはある。隣に長男の姿があったため、きっともう、英明である彼のひとの事、今後の事もきちんと考えてはおられるのだろうが、とも思う。誠凛大学籠球部は大会で優勝を勝ち取った。そして観菊会への招待があった。学校を通してと、赤司を通して伊月にも個人的に。実に複雑怪奇に絡まる思惑の意図に、伊月は既に胃が痛い。 施設の運営も月末決済を見る限り、今のところ特に主立った問題は無いし、軌道に乗ったと言っていい。今吉の下宿で多めに飯を作って、近所の親や金の無い子に分けてやるのも日常だ。ただ、ここに泊まる事だけは、未だもう少し慣れない。 寝巻は今吉の浴衣を借りる。風呂も下宿の共同のそこに金を払って使わせてもらう。近所のひとには『最高学府に通う伊月』ではなく『賢いけどちょっと抜けてる月ちゃん』として慕われる。 随分と面白い二重生活をしていると思う。伊月がこの度、今吉の下宿を訪れたのは、廃屋と化した元は孤児院であった場所の視察と解体処理希望を上に通すためだ。今吉探偵事務所所長助手として、探索や観察はしたが、視察というのは侯爵の肩書きを持って、公安や憲兵から派遣されてきた人間を、どんな言葉でどのように扱うか、というのも試された。 「疲れましたよ、もう。」 今日を振り返って伊月はそう、同人誌を読みながら畳の上にごろごろやっている今吉の腹に突っ伏した。ぐえ、とか言われたけれど気にしない。肘鉄をさり気なく躱したくせに。 「あーあ、どっか静かな田舎で翔一さんと一緒に隠居したーい。」 「それもええねぇ。」 くすくすと、穏やかに笑って髪を梳かれるのに、伊月はまるでよく懐いた猫だ。ふふ、と知らずに笑みが零れて喉が鳴る。 「泊まって来るとはゆうてった?」 「はい。帰る気力ないんで。てゆか甘えたいんで。」 「月ちゃん最近甘えたさんや。」 「悪いですか。」 「いいや、めっちゃええ。」 変に肩肘を張られるより、ずっといい。この愛人は時に頑固が過ぎて困る。単なる助手であるならそれで結構。しかしながら、情愛を交わす仲であるなら、甘えて甘えさせたい。存外に欲張りであることを、今吉は自覚している。手のひらをかりかりと短く切り揃えた爪で玩んでくるのは誘っているのか何なのか、問いたい。 「ほな風呂行って寝よか。」 「だいぶ夜半は冷えますねぇ。」 近所の銭湯は現在改装中で、下宿の狭い風呂に一人ずつ順繰りに、余所から風呂を借りに来る輩もあった。風呂上りに大家のお婆さんが鉄鍋に温めた牛乳瓶をくれて、中身は牛乳に蜂蜜を垂らして甘くしてあって、それを手の中に転がしながら、部屋に戻ってくれば、もう寝るだけ。 「翔一さん、客用布団・・・無いですよね。」 「月ちゃん、もう自主練やろ、部活。」 不精に脚でぺいっと煎餅布団をまだらに日焼けした畳に広げた今吉に手招かれる形で、その腕の中に暖められる。空になった牛乳瓶は明日に大家に還すので、と流し台に二本仲良く並んでいる。 愛しく恋しい香りに煩い鼓動に伊月は目を伏せ、きゅっと膝に拳を握る。黒い浴衣を纏った痩躯の布一枚を隔てて、節の大きな手のひらが弄るのに、戦慄と背筋をあまく痺れが走っていく。 「俊。」 耳元に囁かれる真名に、エレキテルの下、天使の輪が描かれる黒髪が波打ち、花色に染まった頬が、悩ましげに、泣きそうに歪む美貌は、実に艶やかだ。 正座に近かった伊月を深くに抱き寄せれば膝が浮き、迷ったようにしなやかに無駄な肉の無い脚が布団に無防備に投げ出された。 「や、やだ、翔一さん、やだ。」 相手の体の状態を知らされ、自分の期待も探られる羞恥に拒否を紡ぐ声音は熱に濡れている。甘やかに耳に馴染む声に、今吉は暫し目を閉じた。ゆっくり、ゆったり犯して愛してやりたい。 「やん、待ってっ。」 浴衣の裾を割って、内腿に手が滑る。脚の付け根を辿った指は、つぷりと肉に埋まった。耳まで真っ赤に染め上げた貌を、何も知らぬ子供のような仕草で覆うのは逆に酷く艶っぽい。 「ひ・・・。」 「月ちゃん、ええこ。」 期待したのは自分だけで無かったようだ、と安堵に息が漏れる。熱のこもる衣から手を戻し、引き締まった筋肉の心地よい弾力にまた布一枚隔てて撫で回す。 「へ、へんたい。」 「変態で結構。」 震える熱の声に罵られ、ちゅ、と蟀谷にくちびるを押し付ければ、うん、と若い喉が期待で鳴る。後ろ手に回った伊月の手が、背中を辿って首に当てられる。ぱさついた毛先を玩ぶように、指先が頸椎を撫でた。触れられた場所が熱を持つ。器用な手だと、熱い首筋に手を重ねて今吉は思った。 「あっ。」 「掠った?」 胸元にやった指の腹をしこりに啼き声が、甘い。 「ん、うー・・・。」 閨を仄かに染める声が、でんき、と微かに訴えた。 「明るいん、ええやん。」 「やですっ!」 潤んだ黒曜石色の瞳が強く睨んでくるので、ぱたりと今吉は瞼を下した。はあ、と伊月は語尾を上げたが、素知らぬ振りだ。 「これやったら見えんよ?」 「翔一さんの場合、眼開けてても同じでしょ。」 どこか憮然とする声に、くつくつと低く笑えば、じゃあ、と密やかに囁く声音に衣擦れが混じった。今吉の手を解いて、眼鏡が抜かれて頬に布地の感触に、頬が上がった。 「へんたい。」 そんな風に甘く罵る声があるか、と視界を完全に閉ざされた今吉は思う。自分の衣類に乱れは未だ無い。膝にとろりと布地が落ちてきているのに、つまりこの目元に被さった布は、二重に厳重に頭を回って側頭部に結びのある暗闇は、布地からして伊月の浴衣の帯だ。 「触ってええ?」 「だぁめ。」 くちびるを舐める薄い舌が、探る様子も無く肉感的に、先ほど口にしたらしい甘い牛乳の香りがする。 「んっ。」 触覚と味覚と嗅覚の同時攻撃に、一気に熱を上げる男の短絡さに、瑞々しい肌に手を添わせて、口の中に押し入れば、子供の味がした。 「ぅ、んっ。・・・ふ、・・・あっ。」 辿りついた乳頭を引いてやれば、嬌声を零して離れて行った。 「月ちゃん?」 「翔一さん、俺にいいようにされちゃって、どうするの?」 つ、と頤になぞった指の腹は未だ硬い。するりと首筋が裂けて血潮が噴き出る夢想に、ああ、と今吉は思う。構わない。 「ええよ、好きにして。」 鎖骨に噛み付かれたのは直後。手当のように舐めて、帯を外すには少々躊躇ったか、しかし胸元を肌蹴て筋肉の筋を辿って、古傷を舐められて、ちりちりと苛まれる快楽に、はっ、と熱く吐息が編まれた。陰毛を撫ぜて、既に熱く盛り上がっている睾丸を撫ぜて、先端に指先が遠慮がちに擦った。 「ははっ。きもちええ。」 「・・・う。」 愉快そうに言われてしまって、亀頭を擽る指に力が籠る。 「いっつも、もっと狭いとこ挿れるんよ?」 物足りない、と言外に言われてしまって、息を呑んだ伊月は、そのまま自分の指に唾液を塗り込める。袖が揺れて悟られないように、自分の後ろに回した指は、熱を上げた粘膜を容赦なく擦る。 「・・・ふ。」 ちる、と先を啜れば、既に苦い。上顎に滴り、舌に粘液が落ちてくる。口一杯に頬張ったそれを、舌で包んで頭を上下させる、これくらいは教え込まされた。 「はぷ・・・。」 「無理せんのよ?きもちええけど。」 「ん、う、ふぅ・・・っ。」 鼻から呻き声が抜けていくのに合わせて指を動かせば、腰が跳ねた。呼吸が辛い。咥内の熱に腹の中が浅ましい。 「はっ、あ、翔一さ・・・。」 根元から舐め上げれば、今吉の喉仏が上下に大きく動いた。 「ん、くん・・・。」 子犬が媚びるような音で、咥えたそれは、熱い肉刀となって、伊月は息を荒げた口から唾液を垂らした。馴染ませて滑りを良くして、何度も。餌に飢えた犬のような格好だと、自分でも思った。三本目が入るようになったそこは、聊かきついがある程度拡がった。 「翔一さん、くち、下さい。」 接吻の申し出を、今吉は顎を上げることで応えとし、おそらく真っ赤に腫れ上がったであろう薄いくちびるが被さって来るのを舐めた。精液の味に奪われた視界の下、眉を顰めた。 「ん・・・。」 舌を合わせて絡めて、軽く噛む。腰に跨ってくる白い腿が、その感触に鮮明に思い起こされる。腹の上に乗って、後ろ手に探って、先端の挿入に、伊月の舌の動きが止まる。 「ん、うー!」 「・・・っく。」 「あ、翔一さん、ちょ、っと・・・!」 「月ちゃん、さすがに・・・きつ・・・。」 全身が汗を吹いた。うごかないで、と微かに訴えられて、放れたくちびるが、恋しい。 「にゃ、も、やっぱ、いた・・・かも・・・。」 ゆるゆると、焦れる挿入は、強引に襞を割って、その度はくはくと苦しそうな呼吸が落ちてくる。いたい、と言いそうになりそうになって、その度くちびるを噛む。腹に当たった若さは、熱はあるが勃起の力が無い。痛みで萎えたか、と今吉はその細い腰を掴んだ。 「やっ、しょういちさん、まって!」 痛みに揺れる声は熱では無くて涙で濡れた。 「黙って、ワシの肩掴み。」 「うにゃ・・・。」 力を抜いて頽れてきた痩躯を、背中を撫ぜて、肩に食い込む爪を甘受する。浅い部分を擦ってやれば、胸元に黒髪が左右に揺れた。 「痛い?」 「ひにゃ、ちが、ぅ・・・!んっ、ぅん!あにゃっあっ、う。」 腕の中に丸くなった、普段は凛と伸びる背を撫ぜ、緩やかに腰を揺らす。亀頭は入り込んでいる。もう少しで。 「きゃあ!」 悲鳴のような嬌声のような、どちらとも付かぬような声が溢れた。 「ん、よぉなってった・・・。」 解し足りなかったそこが、ぬちりと蠢いた。 「ちゃんとここ触ったらな、いけんやろ?」 「い、いや、にゃあ、しょういちさん、そ、そればっか、んあ、あっん!」 きゅうと一度緊張した身体が白濁を吐いた。 「ふあ、あ・・・。」 「月ちゃん?」 「あ、う・・・。」 「ん、そのまま力抜いてなさい。」 絶頂の余韻から抜け出せずにぴくぴくと小刻みに痙攣する痩躯を宥め、腹に落ちてきたそれを指に絡めて、全てを収めきっていない鞘に指を入れれば流石にきつい。しかし大した抵抗は見られず、ただ、呼吸が甘い。深く、もっと深く。繋がる場所はここだと教え込むように、長い指が出て行った。揺すってやれば、にゃう、と親猫を呼ぶ子猫のような声が上がった。 「あ、は、はいった・・・。」 「今度から解し方教えなあかん?」 「も、つぎ、から、翔一さん、に、してもらうんで、い、です。」 ひはひはと必死に呼吸を紡ぎながら、呼吸が紡がれるたびに内壁が吸い付くように歓喜で蠢くから、二人で堪ったもので無い。 「んにゃぁ・・・。」 ゆっくりと起き上がって腕の中から逃げた伊月は、震える指先で今吉の顎をなぞった。倒錯感に眩暈がする。自分を犯す相手には視界を奪う布がある。だのに腰は強い力で掴まれてあって、胴を挟んで膝を降ろした体を貫くのは。 「あっ。」 足先から脳天までを貫くような強い性感に、伊月は眼を瞑って耐えた。射精するよりも熱くて甘い、熱に浮かされる、それを体現するような強い快楽に。 「ふ、ぅにゃぁあ・・・っ!」 膝が上がったのでもしやと思えば、そのまま一気に弛緩する体を今吉の腕が支えて、強い絞めに腹筋に力を籠めれば、白い首筋が今吉に、食らいつけとばかりに晒されるのを、先ほど伊月が力加減を誤って緩んだ帯の狭間に見る。 「月ちゃん・・・。」 「あ、う・・・しょういちさん・・・。」 まるくなったつま先が高い位置に不安定に揺れて、背中から布団に押し倒された目元が伏せられる。合図のようだと思った。 「ワシしか見てへんよ。」 安心させるように耳元に囁き、肌蹴た浴衣を脱がせて、帯は目元に、視界を奪う。その彼の武器である広い視野を、奪う。 「翔一さん。」 「何?ちょぉ動くで?もうちょい馴染まんと。」 「あいしてる。」 「知ってる。」 薄いくちびるに噛み付いてやれば、淡く呼吸が口の中に解けて消える。 「愛しとるから、すこし、我慢して。」 動かせば随分と窮屈に肉が擦れた。 「にゃ・・・っ。」 「痛い?」 「ん、ちが・・・。」 「力抜いて、ゆーたで?」 「あも、にゃあぁん!」 ずずずと小刻みに動かし引き抜いて、それを掠めれば、腰を強く挟まれた。はしたなく揺れる白い脚が花開くように扇情的だ。 「あ、あう、しょういちさ、そ、こばっか、らめ!!」 「っ、は!」 「ふあ!?」 腹の中に突如広がった熱に、びくと薄い肩が振れた。肩口に甘く熱い呼吸が吐き出された。 「あー、あかん、きもちええ。」 ぐちち、と行為の証明である体内のいやらしい水音に伊月は耳を塞ぎそうになって、手を布団に縫い留められる。指先に軽く歯を当てられ、身が竦む。 「しょ、翔一さん。」 「なんや?」 「か、かまないで・・・。」 「なんで?」 好きだろう、とばかりに乳首に歯を立てれば、高くに声を上げて啼いた。ちゅうっと強くに膚を吸って痕を残せば同じように後ろも絞まる。 「翔一さん、翔一さんっ!」 擦り合わさった膝の裏に歯を当て、内腿に食らいつけば、震える声が、いやだ、と弱く訴えた。愉悦に後押しされた快楽を追って揺れる柳腰が、引き攣れそうになるたびに動きを止めて、また別の場所に食らいつく。 「も、らめ・・・っくるっ。」 はらはらと綺麗な黒髪がエレキテルの光に耀いて揺れる。じゅる、と中に塗り込めた子種が潤滑の伝いに馴染めば、今吉は思わず舌を舐める。 「ひ、にゃああああ!」 ずるずると引き抜かれていった熱の塊に、一気に腹の中を満たされ、甘い悲鳴が部屋に満ちた。 「にゃっ、あ、翔一さん、しょうい、ちさぁ・・・うあぅ、ふ、あぁー!」 「俊・・・。」 「ん、んぅ、は、んぁ。」 くちぬちと絶えず水音が響き、足首が反るのを今吉は捉えてその手の熱さに伊月は身を捩った。中で強く擦れたそれが、嬌声となって喉にひりつく。 「あ!っん、はぁ、んっ!」 足の甲に、足首に、脹脛に、赤く鬱血が散る。縋るように手が伸びて、浴衣の袷をきりと掴む。 「しょういち、さ、も、お、おねがい、だから・・・。」 閉ざされた視界から、それだけを頼りに引き寄せる。 「どないした?」 「翔一さんの、かお、見たいぃ・・・!」 視界を閉ざした貌を覗き込めば、成程、と今吉にしても納得せざるを得ないという事になる。結びを解いてやれば、じわじわと涙の滲んだ目に、睫毛に浮く水滴を今吉は舐めた。強すぎた快楽にしゃくり上げ、手首に今吉が掴んだ痣がついたまま、その手で顔を拭って、安堵っと花のように笑う。 「翔一さん・・・。」 男を咥え込んで清く微笑う、という素晴らしく妖艶で可愛らしい真似をしでかした美貌に、囀るように接吻けを落とし、ゆるりと腰を穿てば、あん、とあえやかな声が零れた。 「くち、ふさいで・・・。」 「ん。」 「は、んんっ・・・。」 耳に擽るように指先を入れれば、きゅっと竦んだ肩に、咥え込むそれも絞められる。 「んっ、う、・・・ん。」 とろとろに蕩けた壮絶な色香が絡む声が腰に甘く重い熱を燻らせる。伊月の脚は快楽を表すかのように侵す腰を抱き、絡む。ゆるゆると腰の動きに合わせて幼気に震える芯を玩びながらくちびるを離して、舌先で唾液を遊べば、媚態に伴って嬌声が零れた。 「うあ、ひゃ、にゃぁんっ。にゃあ、う、あっあ!」 「わは、いやらし・・・。」 「にゃぁん・・・。」 はらりと首が反らされ、その首筋に歯を当てれば、食い千切りそうに絞められ、腹に白濁が飛ぶ。 「は・あぁ・・・う・・・んっ。」 強い性感に身を護るように、くんっと体を今吉の腕の中に折り、きゅっと丸くなった爪先に、擦り合った膝が、一気に弛緩する。 「あやっ。」 腹の奥に蠢く存在に、熱源に、怯えるように引いた腰を今吉が打ち付け、伊月の痩躯は弓なりに撓った。 「あ、っも、しょういちさぁん・・・!」 「月ちゃん、きれぇやなぁ・・・。」 「く、あ。翔一さん、く、るぅ・・・っ!」 明るい色の光彩の住む三白眼に、揺れる瞳が映る。戸惑うように伊月の腕が伸ばされ、必死に訴えるから。 ええよ、と囁けば縋るような指先が今吉の背に回り、きりりといつもと同じ、肩甲骨の辺りに歪な傷を刻む。しょういちさん、と呼ばう真っ赤に色付いたくちびるが華のようで、舐めれば唾液と言う蜜の味がした。 「っあ!にゃあんっ。」 「ん、きもちええ・・・。」 「・・・あぅ・・・ふぁあ・・・っ。」 ぴんと踊り上がった脚が攣りそうに相手の腰を抱いて痙攣し、ぐずぐずになった思考も体も、相手に抱かれるまま、蕩けて、弾けた。ただ、伊月は今吉の名前を呼んで、それしか知らぬ赤子のように告白を繰り返し、接吻を繰り返し、縋って、喘いで、泣いて、啼いた。 夜半に伊月の意識が無くなった頃、自分の傷だらけの体を拭って、今吉は、その腕にいる白磁の肌を撫ぜ、真っ赤に残る痣を見る。ん、と儚く喘いだ声が、白い肢体に散るくちづけの痕が、情事の名残。中に散々出された熱の名残は伊月が気を遣った後に今吉が丁寧に掻き出した。 「綺麗、やなぁ・・・。」 三日の内には消えるであろう痣を撫ぜて、呟く。不意に脇腹の古傷が痛むのは、秋の夜風が隙間に濃いからか。丁度この頃に傷つけられた記憶に体が痛んだからか。 綺麗な愛人に風邪に罹られては叶わぬと、今吉は布団の中で伊月の痩躯を掻き抱いた。腕の中に擦り寄ってくる気配に、睡魔に手を引かれながら、今吉もそのまま眠ることになる。 非公式観菊会まで、あと数日。 今吉探偵事務所、明日は午後から出勤です。 はてさて、彼らは人事を尽くしましたか? |
初出:2013年10月23日 00:00
伊月先輩お誕生日おめでとうございます。最後の最大伏線です。
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憧れの0分投稿をしてみました★
20140109masai