君は何故喋らない、と怒りを覚えなかったと言えば嘘になる。
彼は意思の強そうな眉の下にいつも心配そうに瞳を揺らめかせているのが、彼は特に苛立たしかった。
果たしてその感情は、きっと嫌悪。
幼い自分に嫌悪した。
誰にでも事情という物はあるもので、それを把握しない、理解すらしない自分を嫌悪する、そんな感情。
嫌悪の対義は無関心だ。しかし無関心の対義は感心だ。ならば、彼に向けた感情は、正負を除けば感心なのだ。
感心。
彼の瞳は今日も揺らぐ。どうして言葉を口にしない。劣等感でもあるというのか。そんなものはきっと思春期を過ぎればどうにでもなるというのに、ばからしい。
意思の強さを思わせる眉の下から、そんな弱々しい視線を寄越すなと、はてさてそこで自分は気付くことになる。この感情は何だ、と。
嫌悪というには鮮烈で、鮮やかで、視界に彼がいればふと安堵できる自分がいる。呟くように呼んでみた。ゆったりと笑った彼は、酷く優しく、それは残酷なまでに暖かい笑顔で応えてくれる。ああもう、と叫びたい衝動がぐいぐいと喉をせり上がる。
ああ、知るは語らず、知らずは語りたがる。
「すきだ。」
これはきっと、俺の知らない物語の始まりの出来事。

そうして愛を謳う。












***

水戸部先輩お誕生日おめでとうございます!!滑り込み!!名前出てこないけど水戸部先輩と伊月先輩です!!

2012年12月03日 23:29初出。

水月癒される。

20121206masai