くろいひと、だった。
真っ黒の髪に、真っ黒の瞳で、真っ黒の服を着て、祈りの言葉を聞かされた僕は、その真っ白な手の甲に舌を這わす意外が思いつかないで、その手首の薄い皮膚を食い破った。

まっかなやつ、だった。
真っ赤な髪に、真っ赤な瞳で、その片方は俺に触れる時だけ月光色に輝いた。ずるずると錆びたナイフで体中を掻き回されるような衝動にはそろそろ慣れた。

「ねえ、伊月さん。」
「なに、モンスター。」
伊月さんは俺の名前を知らない。知りたがらなかった。知れば僕を好きに隷属出来たのに、このひとはしなかった。気まぐれに出来た、たとえば揺れる木々が擦れた狭間だとか、猫の目が光る瞬間だとか、鱗を擦れ合った錦鯉の鰭に作られる水面の揺れだとか。そんな場所からずっと見てきたこの人は、ずっと高潔で純粋で、でも寒天に包丁を入れた瞬間みたいに少しだけ歪だ。
「ねえ、伊月さん?」
「どうした?今夜は随分と甘えるね。」
黒い服を肌蹴た白い肌は、実は結構傷だらけで、どうしたのと聞いたら、昔の事は忘れたよ、と優しく、何もかもを赦して笑んだ。じゃあどうして、その傷跡は、僕たちが深く交わるのを詰る様に背中に浮かぶんだろうね。
「呼んで。」
「どうした、モンスター?俺の愛しい赤い悪魔。」
「伊月さん。伊月さん。いづき、・・・俊。」
「うん、どうした。」
儚く浮かんで消える夢の影は、徐々に僕のこころを真っ黒に染めていくんだ。何も知らない、血のように、このひとの血液のように真っ赤だったこころは、夢の影を追う毎に黒くなる。赤い悪魔のこころが黒いだなんて、面白い冗談じゃないか。
「しゅん?」
「うん。」
とろとろと流し込んでいく甘い唾液に、耐え切れなくなって目を閉じたその瞼を舐めれば涙の味がする、と今、知った。あ、としか紡げなくなるくちびるに歯を立てたら、一瞬とても、このひとは怖がる。でも、今日は怖がらなかった。今だから怖がらない?明日はまた怖がる?さらさらと月の輪色に耀いた黒髪を梳いて、真っ赤な傷跡に指を添わせた。
「ねえ、食べていい?」
恐慌か、恐怖か、幸福か、歓喜か、官能か、もうどれだかわからないくらいに散らかされたこのひとの言葉は、紡いだ。
「征十郎。」
ああ、知ってたんだ。
知ってたんだ、知ってたんだ。
知ってたんだ、知ってた、知ってくれてた、持ってくれてた、無理矢理預けた僕の名前を、このひとはまだ、伊月さんはまだ、持っていてくれた。
宝箱の鍵をひとつひとつ外すみたいに。
「せいじゅうろう。」
やわらかくやさしく触れたら溶けそうな氷菓か砂糖細工みたいな、そんな風に僕を呼ぶから。
「食べて。」
俺の全部をお前にして。
嗚呼。
「俊。」
だったら、僕の全てを君にしてよ。

最高の翼と瞳を君は持っている。僕をこの世の果てまで、今夜、連れてって。
最高の翼と瞳をお前は持ってる。俺をこの世の果てまで、今宵、連れ立とう。




きみのものへ。










***

赤月ひゃっふーぅ!記事が出来たと聞いて!!赤月ひゃっはーぃ!!だったら普段ごーいんぐまいうぇーするチュウニな感じを全面に押し出してどうだーこらー!!!赤月わっはーぃ!!!マフィアってかヤの字と神職関係は私の中で双璧を成しておるのです。しかし最近海賊パロまたじわじわきてて無駄に増える設定とか二つ名いえーぇぁ!!!!伊月は「月色のイーグル」辺りかなってね!!しかし私好きキャラの二つ名色に偏りすぎるwwww赤司はそのノリで行くと絶対「赤海の欠神」wwwww二つ名好きです。(真顔。



2012年11月06日 02:09初出。

百科事典赤月出来た記念でした。

201206masai