いれたての。

 

公立の大きな総合病院は中学時代の同輩が勤める病院で、その近所には丘を上がって中学校があり、小学校が並び、麓の病院の駐車場の傍には幼稚園と放課後児童クラブの施設がある。黒子テツヤはこの春に出した本がうっかり賞に引っかかって、あちらこちらでちやほやされて、ついでに次回作も期待していると、行く先々で言われまくってフラストレーションがなかなかに危ないラインに達した所で、担当編集が、ネタ集めを兼ねて子供たちと遊んでくるのはどう?と提案したのがそのそのも始まり、だった気がする。多分。おそらくは。

「いらっしゃいませ。」

気分転換にと担当編集高尾和成の伝手で教えられたそこは病院の職員の子供の託児所であり幼稚園であり保育所であり放課後児童クラブなそこだった。因みに印税なんやらは普段の生活と貯金で明らかに余った分はあちこちに匿名で寄付したりもしている黒子が休憩時間や子供たちが帰った夕方に利用するのは、クラシックな調度がされたちいさな喫茶店だった。中学時代の同輩こと緑間真太郎も休憩時間によく利用するという、落ち着いた店内は片隅に純文学とその日の新聞なんかも置いてあって、最近は子供たちの施設にボランティアが無くても立ち寄って、時折は物語の構想をノートに走り書いたりもした。

プロットは基本アナログ作成。入稿はワープロソフトで印刷したものを一度高尾に見て貰ってからメールで出版社に送る。

「コーヒーですか?」

「あ、はい。」

「いつもご利用ありがとうございます。」

目元が涼しげに笑う男性は、この店のオーナーの長男だと、聞いたのはそれなりに通い詰めたころだったように思う、ネームプレートにはフロントチーフの肩書と『IDUKI』という名前がある。

クールというには聊か茶目っ気が過ぎるところを黒子は何度も見たし、それでも勤務態度は綺麗で丁寧だ。彼の淹れるコーヒーは、飲みたいときの気分を察するようにブレンドを変えてくれる。

「なんか、ほっとします。」

「嬉しい事を仰ってくれますね。」

「伊月さんのコーヒー、美味しいです。」

「ホットコーヒーでホッとする。キタコレ。」

「ホットケーキでも言ってましたね。」

「仕事が捗れば、俺としてはホッと何よりなんですけど?」

ばれましたか、と黒子はすこし、笑った。

仕事用のノートを見れば、昨夜の自宅で作成した場所から一つも筆は動いていない。かりかりとコーヒーサーバを動かして、カウンタ席に座っている黒子のノートや手元の動きはどうやって見ているのだろうか。少しだけ楽しそうな伊月の声音に、まあいいか、と黒子は指先にペンを回した。

「甘いものでもいります?」

「え。」

「実はですね。」

美味しいコーヒーが目の前に運ばれるその腕は、しっかりとした骨格だが骨が細いのか、黒子が知る中では細い部類に入る。喫茶店の仕事は割と力仕事も多い筈だが、と昔に取材させて貰った現場を黒子は思い出す。それでも伊月は時折小麦粉の入った重そうな袋を店の裏に停めた喫茶店の名前が入ったバンから何往復もしているのを見たことはある。

「新作のワッフルなんですが、味見なんてしてみません?」

こそっと、耳触りの良い声音が、密やかに囁く。御代は要りませんよ、なんて。

「伊月さんが?」

「まあ、お菓子作りは昔から趣味でやってましたけど、店に出すならどうするか、って感じです。」

結構砕けた喋り方には黒子が通った歳月が感じられて、少しだけ嬉しい。

「頂いてもいいですか?」

「はい、少々お待ち下さい。」

にこりと、営業の中に隠れる素直な笑みが、黒子は好きだった。

 

ほっとする。

ホットコーヒーを淹れたてに。

入れた、手に。

***

初出:2013年1月4日 16:51

正月スペシャル川柳でPN一期一会さんというのがあって思わずインテ準備投げてこっちw小説家黒子と喫茶店店員伊月。黒月増えないかなーインテで伊月先輩漁るつもりがご覧の有様ですし、次の夏は私がどうなってるかわからん仕事的な意味であー仕事爆発して夏だけでいいから休ませて。インテと被ったら多分休むけど!!金は必要最低限でいい。好きなことやるってのは貧乏覚悟なんだよ。というのが持論なんですがなんでみなさんお年玉くれはるんですかまあそうだよな外から見たら私完全無職だよねもういいよ!!貰っておきますお年玉!!人生40までは与えられる側で今度は60までは耐えてあとは与えて味わえってニャンコ先生(not夏目。)ゆってたし!今はせいぜい甘えて暮らして親が生きてるうちになんかイッコでも孝行できたらいいやと呑気に思う正月でした。というわけでインテはドジ踏んで二重申込みとかしちゃってたんでテニススペースです。本人多分売り子ちゃんに全部任せてタイバニとか忍者の卵とか行ってます。いつもの行動パターンから考えると午後にはスペース戻ってのほほんしてますんで、スケブもお受けできると思います。今花月クトゥルフところどころの大間違いに頭を抱える昨日今日、今からインテ準備します。あ、ついったで上げてた墨画何枚か持っていくかもなんで、現物見たいって方おられましたらお気軽についったとかメッセージ機能とかでお知らせください。欲しいって方にはイベント終了後くらいにお譲りも出来ます。イベント内では黒バス関連下手に触れないしね。二次画はね、あのままクロッキーに使われてつぶされちゃう運命なのさ。というわけでよろしかったら、多分4号館のほうにも顔は出しますが、基本野良猫してるんで、お気軽に捕まえてください。とここで長々告知してもね。まあ要するにあれですよ。伊月先輩下さい!!!!!!

20141203masai