CAPRI
恋愛対象が同性だと気付いたのは中学の頃だった。恋愛対象が、というか、同性に勃起した自分にだ。確か授業中の寝言として聞いた鼻に抜ける声は、心臓が弾けそうになったし、勃起もした。
一時の性欲かと思ったし、告白してきた女の子と付き合ってセックスもしたけれど、まあ勃起もしたけれど、というか無理矢理させたけれど、入れてみたら確かに気持ちよかったけれど、人間の体なんてそうやって出来てる。無駄に精子を消費して、確か三ヶ月くらいで別れた。それから女を恋愛対象にしたことはない。
「なんか、壊れそうじゃない、女の子って。」
姉妹の間で育ったので、女性に対する夢も見たことは無い。でも原因はそこじゃない。女と言う生き物を、性的な意味で見れないのだ。女が嫌いなわけでもない。ふわふわと可愛らしかったり、さばさばと格好良かったり、色んなタイプの女性は確かにその広い視野は観たのだ。
「こうね、肩の角度とか、腰回りの骨格とかね、なんか、多分その辺なんだろうなぁ・・・。」
どこでそれは分岐するのか、染色体の一つで決まるその形状の違い。
「別に、男なら誰でもいいって事も無いんだよね。困った事に。好きって感情もいっぱいあるじゃん?」
友愛だとか、恋愛だとか、情愛だとか。絡み合う人間模様と言うのは解いてみれば実に簡単な意図で結ばれていたりする。無償だったり打算だったり、それこそひとの数だけ。
「強いて言うなら脚とか腕の筋好き。肘曲げて、力いっぱい拳握ったときに筋肉の筋出るじゃない?その辺とか。だから俺、女の子の細い手首とか駄目。壊しちゃいそうってのもあるけど、細っこくて気持ち悪い。よくこんな腕で生きていられるなって。まあ、意外と人間って頑丈なんだけどさ。」
切れ長の目は下瞼の粘膜が血色に透けて、なんだか艶めかしい。自分の腕をなぞった指先は、白蛇のように柔軟だ。睫毛は真っ直ぐに下を向いて眼球を守っている。
「んで、基本、男女ってことを抜きにするとセックスは嫌いじゃないんだよね。気持ちいのは好きだし。」
じぃっと見詰め上げてくるのは黒曜石の様な瞳。綺麗に涙が濡らしていて、清楚を装った劣情が奥にちらつく。
「中学高校は部活も忙しくて、女の子からの告白は基本的に断ってた。時たま変わった男がいてさ、好きにならなくてもいいから身体見せろって。んで、ちょっとまずったっていうか、んー、まあ簡単に言うと勃っちゃった。割と好みだったし。無個性なとことか、でも部活で体鍛えてたとことか。で、高校生なんてヤりたい盛りじゃない?結局そのままトイレでやって、そっからはもう駄目だったかな。男しかそういう目で見れなくなったの。ちゃんと自覚した、ってのが正しいと思う。男同士って変な関係だよね。子供は作れないけど入れるもの入れられるのもオッケー。気持ちいいの最優先。」
なんだかコーヒーを混ぜたスプーンは楽しそうだ。手を付けないのは冷ましているからだ。爪は昔からの習慣で深爪にならない程度に切り揃えている。自嘲のようにひとつ、くすりと笑った彼はそのまま、つつと暖かい水面をスプーンの先で撫ぜ、音も立てずにソーサに置く。丁寧な躾が垣間見えるが、その赤いくちびるは淫蕩だ。窓の外に視線をやって、一度瞬くと、頬杖を突いた。何が見えたのだろう。
「気付いたら、猥談は参加しなくなってた。面白くも目新しくも無いし。最近じゃネットでもアダルト映像見れるしね?あ、念のためそれは高校卒業待ったよ、見るの。大学入って一人暮らし始めたら家族への遠慮も無くなったから。三股疑惑には困ったかな、一人女の子混じってて、男の嫉妬はほんと怖いよ。女の子はゲイだったんだけど、だから仲良かったっていうか。でも他の男が信じないわけ。因みに俺に付き合ってた意識もナシ。恋愛って怖いね。一人でも出来るんだからさ。けどまあ、責任は感じてるよ。男に目覚めさせた、っての。そういうのっていつまで続くのかな。結婚式の招待状とか来たら大爆笑する自信あるよ。」
でもそれがきっと正常な判断なんだろうな、と呟いた。判断、と。それは思考だと。
「思考を志向して試行しよう。キタコレ。」
男としての人生ならば、女の体に種を植えて共に育んでいくのが正常な判断であり、人生の道しるべなのだろう。このゲームが酷くリスキーである事も、理解はしたつもりだ。つもり、ではある。
「さて、長ったらしいお話は、俺もそろそろ飽きてきたんだけどさ、どうする?」
漸くカップの淵にくちづけた男は大変に美しく、かったるい、なんてぼやいて吐かれた溜息は蠱惑。冬の午後に短い日が空を赤く染めて、徐々に紫色を渡って藍色になる。
「伝票、持ってくれる?宿代なら出してやってもいいから。」
欲求不満なんだよね、という言葉は互いにしか聞こえない、吐息のように囁かれた。
「・・・満月の近い日は、腹の底が滾る感じ、お前は解る?」
同意されても困るけどね、と寒さに握り合わされた指先は、これまで触ってきた男の痕跡を脱皮し忘れ続けてきた白蛇の交尾のように醜悪で何とも言えず妖艶でうつくしい。
「伊月って変わってるな、やっぱ。」
「あっそ?また違う扉も開拓してみようか?」
お前と一緒にね、なんて甘く囁く相手は、他にどれだけいるのだろう。
それでは皆様良い夜を。
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初出:2013年1月20日 22:30
ガチゲイ伊月先輩描いてみたいなと呟いたらフォロワさんに煽られたwwwガチゲイでビッチな感じになった。あるえー?直前まで猫猫しい伊月先輩画いてたからかな。まあなんというか相手は誰でもお好きにどうぞ、ゲイでもホモでも道を踏み外しかけてるでも伊月先輩とCP組める人は誰でも。R指定にするまでもないけどそうだな、結構過激なY談とかそんな感じ?
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気ままな黒猫、という感じでこのタイトルに。
20141203masai